ブリッジ・入れ歯・インプラントどれがいい?

「ブリッジ・入れ歯・インプラントの説明を受けたけれど、それぞれメリット・デメリットがあって迷ってしまう。」

「歯医者さんに次までに決めてきて欲しいと言われて困っている。」

当院にセカンドオピニオンを希望されて、来院される方からも時々ご相談いただく内容です。

歯が抜けた状況や、周りの歯の状態などにより、条件は変わりますので、細かく言い出せばキリがないのですが、

どれがいいかと聞かれた時に多くお答えするのは

「インプラント」

です。

仮に私自身が自分の歯を失った場合ですが、入れ歯もブリッジも自分の口には入れません。

間違いなくインプラントを選択します。

私と同じか、それ以下の世代の歯医者の先生でしたら、きっと同じくインプラントを選ばれると思います。

現代の歯科では、インプラントは正しくおこなえば、入れ歯やブリッジと比較すると、長期に安定する治療方法ということが、世界中の多くの臨床データに裏付けがあります。

インプラントは

①保険が効かなくて治療費が高い。

②手術が必要。

③すぐに歯が入らない。

など、捉えようによってはデメリットもありますが、手術といっても、日帰り局所麻酔でおこなう手術で1~2時間で終わり、手術は麻酔が効いていますので痛くありません。

また、基本的にすぐ歯は入りませんが、通常数か月以内には入ります。

一般的には3か月後が多いです。

私がインプラント以外を選ばない理由に触れます。

まずは、ブリッジを選ばない理由です。

以下の数字をご覧ください。

54%

 

この54%とは、神経を抜いた歯に被せたブリッジの8年累計生存率です。

生存率とは読んで字のごとく、寿命で駄目になる率です。

ブリッジは歯が無い所の両隣の歯をつないで、橋(ブリッジ)をかけるように被せて固定する方法です。

*ブリッジは、右下の図

しかし、両隣の歯の神経が過去に抜いてある場合は、生存率は極端に下がります。特に両隣の歯とも神経を抜いてある場合はかなり厳しくなります。

ブリッジが駄目になるというのは、被せ物が取れてしまうなどの単純なトラブルよりも、ブリッジの中にある歯が、虫歯や歯根破折で抜歯になることがほとんどです。

つまり更に歯を失うということです。

歯根破折についてはこちら↓

歯根破折

 

次は入れ歯を選ばない理由です。

入れ歯はバネをかける歯を傷め、その歯の寿命を短くします。

もう1つのデメリットがあります。

例えば、部分入れ歯(下の画像のような入れ歯)を入れている場合、入れ歯の部分より、入れ歯ではないご自身の歯の方が噛みやすいので、食事の際には無意識に、入れ歯ではない方の歯で噛む回数が増えてしまいます。

たとえば右の歯に部分入れ歯を入れていたら、左の歯でばかりで噛んでしまい、左の健康な歯を過重負担で傷めてしまうということです。

入れ歯やブリッジは、周りの歯に負担をかけ、周りの歯の寿命を短くします。

そして数年後に負担がかかった周りの歯を失うことで、更に大きなブリッジや入れ歯を入れるという負のスパイラルに陥いる可能性があります。*すべてケースに起こることではありません。

歯を失った本数が多くなると、ブリッジは強度的に設計上無理になり、大きな入れ歯を入れるしかなくなります。

入れ歯は大きさが大きくなるに比例して、違和感や噛みづらさもどんどん増してきます。

いよいよ入れ歯の不自由に耐えかねて、インプラントを決心する場合もあると思います。

その時は、既に失った歯の本数が多いので、インプラントも1本や2本では済まず、費用や手術負担が大きくなってしまいます。

上の入れ歯は、歯を6本失った場合の入れ歯ですが、入れ歯をやめてインプラントにする場合は、最低でも4本のインプラントが必要です。

ここまでお話しすると、当院ではインプラントばかりすすめているのか?と思われるかもしれません、決してそうではありません。

最初に書きました通り、お口の状況は様々ですので一概には言えませんが、私は、歯を失った患者さんにブリッジ、入れ歯、インプラントのメリット・デメリットをお伝えした後に、その中から選んでいただいています。

もちろん患者さんによっては、インプラントを望まれても、手術が出来ない場合もありますし、インプラントが必要ない方もいらっしゃいます。

こんな場合です↓

  1. ご高齢の方で既に入れ歯を長年お使いで慣れていらっしゃる方。
  2. 金属アレルギーがあってインプラントが出来ない方。
  3. 基礎疾患(重い糖尿病など)があり、手術にリスクがある方。
  4. 極端に骨が痩せていて、インプラントを入れられない方。
  5. 費用や治療期間の問題でインプラントを選ばない方。
  6. 手術が怖いので、インプラントを選ばない方。

上記ような理由から患者さんとお話ししながら、当院は患者さんの選択された治療方法を100%尊重していますので、ブリッジや入れ歯を選ばれたら、出来るだけ長持ちするように最善を尽くしています。

今回、歯を失った後に、どの治療方法がいいと思うかについて私の考えを書きました。

今のところ出来ませんが、もし歯を失った天然の歯が、もう一度生えてきたり、再生できるなら、絶対にそれがいいです。

それくらい天然の歯は素晴らしい機能を持っており、ケアを怠らなければ、一生持つものです。

治療で歯を出来る限り長持ちさせることは、ある程度可能ですが、やはり、一度でも治療した歯は、一生持つ可能性は低くです。

天然の歯を大切にしていきたいですね。

以上「ブリッジ・入れ歯・インプラントどれがいい?」でした。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

インプラントのルール

入れ歯をやめてインプラントにする患者さんのケースです。

画面左側に部分入れ歯が入っています。入れ歯の違和感が強く、食事の時は、ほとんど反対側の入れ歯ではない歯で噛んでいるそうです。

 

入れ歯を外すと、こんな感じです。このまま入れ歯を使い続けると、画面左下の銀歯が折れるリスクがあります。

 

治療する場所のレントゲン写真。

 

インプラントを入れる時には、隣の天然の歯との距離、インプラント同士の距離に、最低必要な数値が決まっています。

インプラントと天然の歯の間は、最低1.5mmの距離が必要です。

インプラントとインプラントの間は、最低3.0mmの距離が必要です。

この距離を侵すと、隣の天然の歯にダメージを与える可能性や、入れたインプラントが長持ちしないリスクがあります。

今回のようなケースで、距離のルールを守りながら、2本のインプラント入れることは、そう簡単ではありません。

1本目のインプラントが、左右どちらかにずれて入ってしまうと、2本目のインプラントとの距離のルールを守るのが、難しくなります。

例えるなら、

2台ギリギリ入るぐらいの場所に、2台の縦列駐車をおこなう感じです。

どちらか1台が変な方向に停めてしまうと、もう一台が停めにくくなるか、最悪停められない状態になります。

 

そこで、ここに入れたいという位置に確実にインプラントが入るように、

ガイド

というものを作ります。

まずは、院内でCTレントゲンを撮影をし、ガイド製作会社にCTデータを送信し、シミュレーションソフト用に変換してもらいます。

 

私がPC上で、骨や血管・神経を確認しながら、2本が丁度よく安全な位置に入るようにガイドの設計をおこないます。

 

出来上がって納品されたガイド↓

 

手術より前の日にお越し頂き、ガイドの適合に問題がないかを確認します。

画面左側に2つの穴があるのが分かりますでしょうか?

この2つの穴に、ドリルを入れることで、入れる位置がずれないようにします。

 

ガイドを使うことで、計画した位置にインプラントが入れやすくなりますが、どんなものでも、完璧はないので、手術途中で方向に問題がないか、レントゲン写真を撮影して、確認します。

 

無事、計画した位置にインプラントを入れることが出来ました。

 

最終の被せ物は入った時の確認レントゲン写真です。画面右の銀歯も問題がある歯でしたので、この機会に治療しました。

 

術前

 

術後 部分入れ歯がなくなり、固定性の歯になりました。

すべてのインプラント手術にガイドが必要なわけでありませんが、ここぞという時には頼りになるのがガイドです。

ガイドにも色々な種類があり、

① 左右前後の位置だけをガイドするもの。

② 左右前後の位置だけでなく、インプラントを入れる深さ(垂直的)までガイドするもの。

③ ①②に加えて、事前に計画した太さや長さのインプラントが入るガイド。

ガイドのグレードを上げると、より早く安全に手術が出来ます。

しかし、ガイドが使いづらいケースや、ガイドだけではカバーできないケースもありますので、ケースに応じて、ガイドの有り無しや、使う場合は目的に応じたグレードのガイドを選ぶ必要があります。

以上「インプラントのルール」でした。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

インプラントの失敗

院長の笹山です。

インプラントの失敗。

歯科医も患者さんも出来れば経験したくないことですね。

失敗といっても色々な失敗があるのですが、

ここでは、

「インプラント手術後にインプラントが骨にくっつかなかった。」

について説明します。

通常インプラントは、術後約3か月程度で骨に結合します。

結合のプロセスについてはこちら↓

インプラントの結合度を調べる。

インプラントが骨に結合しましたら、インプラントの上に被せ物を付けるのですが、その前にインプラントが抜けてしまうことがあります。

つまり骨に結合しなかったということです。

結合しないのには、色々な原因があるのですが、

インプラントを入れた時に、

インプラントが骨に固定されずに、緩すぎる状態で入ってしまった場合や、

逆に骨にかなりの力で入れてしまった場合に起こります。

例えますと、

木の板にネジを入れる時に、

ネジがユルユルで入ってしまった場合と、

板にヒビが入るくらいの強い力でネジを入れた場合です。

緩すぎると抜けますし、きつ過ぎると周りにダメージが加わってしまうのです。

また、インプラントを入れる際の冷却が足りなくて、骨が火傷を起こしてしまった場合などにも、インプラントがくっ付かなくなるといわれています。

インプラントはドリルで骨に穴を開けるので、ドリルが高温になって骨が火傷を起こさないように、常に冷えた生理食塩水を注水してドリルを冷やしているのですが、骨の深い位置にインプラント入れる場合は、その冷却が届きにくい場合があります。

下図の赤矢印部分がドリルに注水して冷却している様子。

*日本歯科医師会HPより引用

他の原因では、インプラントを入れる骨自体の質が、そもそも良くなかったいうこともあります。

手術に完璧はないのですが、これらリスクは術者が気を付けることで基本的には回避できます。

これらの問題がなくても、稀に原因不明でインプラントが結合しない場合もありますので、失敗というのは少し厳しい言い方かもしれません。

インプラントが初期の段階で抜けてしまった場合に

「自分の骨にはインプラントが合わないのかな…。」

と思われるかもしれませんが、

再手術すれば、問題なくインプラントがくっ付く場合が多いです。

なぜなら一度インプラントを埋めるために開けた穴は、新しく綺麗な骨で埋まるからです。

ですので、インプラントが上手く結合しなくても、

再手術という精神的・肉体的な負担はありますが、もう一度手術を受ける価値はあると思います。

以上「インプラントの失敗」でした。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

 

インプラントなんか体に入れて大丈夫なんですか?

インプラントの説明時に患者さんからよく聞かれる質問の1つです。

「インプラントみたいな金属を体に入れて大丈夫なんですか?」

金属を骨に入れたままにして、体に異常が起きないかとか、金属は錆びたりしないかと、体に安全かどうかの不安だと思います。

体に悪影響はないかという点においては、

「大丈夫です。」

といえます。

大丈夫な理由を説明していきます。

皆さん、骨折した時にプレートで骨を固定することがあるってご存じですか?(ご存じない方は、「骨折 プレート」でネット検索してみてください。)

骨折した部分を金属製のプレートでつなぎ合わせて、金属製のボルトでしっかり固定することにより、骨がくっつきやすくなります。

昔はそういう方法がなかったので、ギブスでグルグル巻きにして、自然にくっつくのを待ってたんですよね。

私も子供の頃に腕を骨折して、石膏に浸したガーゼで腕が倍の太さになるくらいのギブスをつけました。夏だったので、中が蒸れて、痒くて辛かったのを覚えています。

話を戻します。

そのプレートはチタンという金属で出来ています。

プレートを固定するボルトもチタンで出来ています。

チタンは骨に入れても、腐食したり、アレルギーを起こしにくい素材です。

ちなみに骨折が治った後も、プレートを外さないで入れたままでも、基本的に害はありません。*入れた場所によっては、取り出すこともあります。

それを取り出すには、また皮膚を切って手術しなければならないので、「せっかく骨が治ったのに、また手術するの?」ってなりますよね。

骨にずっと入れっぱなしでも問題が起きにくい金属材料、それがチタンです。

そこからヒントを得て、だったら、「歯の根っこの代わりに使えるんじゃない?」

と始まったのが、現代のチタン製インプラントです。

 

インプラントはネジの形をしています。

Dental implant isolated on white background

釘のようにツルツルの表面ではなく、ネジの形をしているのは、骨に入れる時に、骨に食い込ませて固定を良くするためです。

それと、ネジのように凸凹している方が、骨との接触面積が大きくなり、くっつきが強固になるからです。

インプラントは一度骨にくっ付くと、反対回しに回しても抜けません。

普通のネジはドライバーで逆回転したら抜けますね。

チタン製のインプラントは単に骨に食い込んでいるだけでなく、オッセオインテグレーションという形で骨と結合します。

「じゃあ、どうやっても抜けないの?」

というわけでもなく、かなりの力を逆回転で加えると、周りの骨が壊れながら、外れます。

しかし、日常生活の食事などで加わる力では抜けません。

ということで、チタン製インプラントは長期間、骨に入れても大丈夫であり、体に安全な治療といえます。

ただし、チタンも金属ですので金属アレルギーの可能性がないわけではありません。

実際にインプラントをおこなった患者さんにチタンアレルギーの検査をおこなったところ、アレルギー性陽性の反応が出る方が稀にいらっしゃるようです。

しかし、陽性の検査結果が出ても臨床的なアレルギー症状はほとんどないそうです。

ですので、心配な方は手術前にチタンアレルギーのパッチテストを受けられるといいと思います。

以上「インプラントなんか体に入れて大丈夫なんですか?」でした。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

寝たきりになってもインプラントは大丈夫なの?どうなるの?

患者さんにインプラントの説明をした時に聞かれた質問です。

「先生、もし寝たきりになってメンテナンスに通えなくなったら、インプラントはどうなるんですか?」

その患者さんは、お友達のお友達からのまた聞きで

「寝たきりになったらインプラントは抜かなきゃいけない。」

と聞いて不安になったそうです。

まずなんですが、

寝たきりになったり、歯医者さんに通院出来なくなっても、インプラントを抜く必要はありません。

何かの聞き間違いか、勘違いだと思います。

そのままで問題ありません。

例外的に、インプラント以外のご自身の歯が抜けてしまって、インプラントの歯だけが残ってしまい、食事で邪魔になったとします。*そのようなことは、ほぼ無いのですが…。

また、介護が必要になって、口腔ケア(お口の中を綺麗してもらうこと)をする際にインプラントの本数や被せ方によっては、介護者にとってケアの妨げになることもあるそうです。

「インプラントを外したい。外して欲しい。」

その場合は、以下のようにします。模型で説明しますね。

*分かりやすいように、模型の歯ぐきは外してあります。

インプラントに被せ物が入っている状態です。

 

被せ物を外すと土台が見えます。

 

下の図のように、土台が無い場合もあります。

被せ物や土台を外すと、歯ぐきと同じ高さ、もしくはそれより低い位置にインプラントの”てっぺん”がきます。模型に歯ぐきを戻しました。

この時点で、骨の中にインプラントは残るけれど、歯ぐきより上に、歯(被せ物)が無いので、歯を抜いた(歯が無い)のと同じように、フラットな状態になります。

この状態なら、口の中に残っていも、邪魔になりませんね。

このようにすることを、

スリープ

といいます。

被せ物を外して、インプラントの噛む機能を停止する(寝かせる)ということです。

この状態でインプラントを骨に入れたままでも、基本的に問題はありません。

歯ぐきと同じ高さなので、食事や会話の邪魔にもなりません。

現在、日本でインプラント治療を受けた方は200万人を超えているといわれています。

約40年前から日本で始まったインプラントが普及し、若い時にインプラントを入れた方もご高齢になっています。

そのような方が寝たきりになったり、通院が出来なくなった時に備えて、インプラントの被せ物は接着剤ではなく、ネジで固定し、ネジを回せば、すぐに外れるようになっています。

初期の頃は接着剤で被せ物を装着することも多かったのですが、近年では、このような事情やその他を踏まえて、ほとんどの被せ物がネジ止めになっています。

またスリープしたインプラントをそのままにせず、新しく入れ歯を作って、入れ歯の下に潜り込ませて、インプラントの”てっぺん”に磁石をつけて(下の画像左)、入れ歯を外れにくくしたりと、転用して生かすことも出来ます。

上から入れ歯を入れることで、入れ歯の沈み込みを押さえてくれる。

マグネット入れ歯の一例↓

このように、たとえ通院できなくなっても、インプラントを抜く必要はありません。

ちなみに当院のインプラントは、上記のような柔軟な対応が出来るように、被せ物は、接着剤ではなく、すべてネジ止めにしています。

これなら、急に通院出来なくなった上に、被せ物を外さなければならなくなっても(あまりないケースですが)、私が患者さんの元へ行けば、5分もあれば、痛みもなくすぐに外すことが出来ます。

もちろん私じゃなくても、インプラントの知識がある歯医者さんなら、同じことが出来ます。

注)ネジ止めのインプラントに限ります。

以上「寝たきりになってもインプラントは大丈夫なの?どうなるの?」でした。

皆様のお口の健康維持に少しでも参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院