歯を失った場合には、失った部分を補う治療方針として、
入れ歯、インプラント、ブリッジ、歯牙移植、矯正治療、何も入れない
などの選択肢があります。
失った歯の両隣に歯がある場合、現実的にはブリッジかインプラントの2択になると思います。
両隣の歯を削ってブリッジ↓
両隣の歯を削らずにインプラント↓
どちらがいいですか?
と、聞かれればインプラントなのですが、ブリッジを選ばれる場合もあります。
しかし、今からお伝えするケースはインプラントにした方がいいケースです。
当院では複数の選択肢がある場合、それぞれの治療方法のメリット・デメリットを説明し、患者さんに選んでいただくというのが基本方針ですので、「インプラントがいいですよ。」という説明はしませんが、このケースに限っては「インプラントの方がいいです。」と、ハッキリとお伝えしました。
なぜインプラントを薦めたのかを実際の治療経過で説明しますので、ご覧ください。
治療前の患者さんのレントゲンです。向かって右側の下の奥歯、右から2番目の白く映っている歯の根が割れてしまっています。
拡大画像です。
このブログで何度も書いてきた歯根破折(しこんはせつ)という状態で、治すことが出来ないので抜歯となります。
患者さんは入れ歯は嫌だということで、選択肢から入れ歯は除外され、ブリッジとインプラントの説明をおこなうことにしました。
実は、この患者さんはブリッジを選ぶと大きなリスクがあります。
先程のレントゲン写真で割れてしまった歯を抜いて数か月後のお口の写真です。向かって右側の1本奥歯がないところが抜歯した歯です。
ブリッジにする場合、通常は①と②の歯を削りますが、この患者さんの②の歯は内側に倒れて生えています。
①も②も共に神経があり、一度も治療されたことのない、健康で綺麗な歯です。
ブリッジにする場合、①と②の生えている方向が同じであることが大事です。
ここではその理由は割愛します。
この場合は内側に倒れて生えている②を大きく削らないと、①に方向(平行性)を揃えられません。
②の歯をそこそこに削って接着ブリッジという方法もあるにはあるのですが、1歯欠損の割にスパンが長いことや咬合力を考慮して除外しました。(専門的な内容です。)
大きく削ると②の神経が露出するので、露出した神経を抜くことになります。
ここで大事な話があります。
神経を抜くと、歯は割れやすくなります。
今回、歯根破折で抜いた歯も過去の治療により神経が無い歯でした。
また、神経を抜いた歯を連結したブリッジの寿命は10年で60%程度といわれており、神経のない歯がまた割れて抜歯になる可能性が高いです。
失った1本の奥歯を補うために、もう1本の歯の神経を抜いてブリッジにして、10年後にその歯が残っている可能性は60%だとしたらどうでしょう。
①の歯が無くなると、元の歯も含めると2本連続で奥歯は無くなります。
これを両隣の歯でブリッジにすると、過重負担になり、更に歯を失うと可能性が高まるという悪循環に陥ります。
2歯連続欠損のブリッジはかなり寿命が短いです↓
そこでようやくインプラントにするにしても、2本のインプラントでは費用は単純に2倍になります。
ここまで書いたブログのような説明を患者さんにおこないました。
たしか説明だけで3回ぐらい通って頂いた記憶があります。
そんなにインプラント推すの?と思われるかもしれませんが、そうではありません。
それだけ説明してリスクも納得して頂いて、ブリッジを選ばれたのなら、歯科医としては少し不本意ですが、結果としては全然構わないのです。
一番大切なことは、
リスクを理解した上で、患者さん自身が治療を選んだという事実です。
逆に良くないのは、今のような説明がないまま、安易に歯の神経を抜いてブリッジを入れてしまうことです。
さて、治療の結果を見てみましょう。
患者さんは両隣の健康な歯を削ったり、ブリッジのために健康な歯の神経を抜くのを回避するためにインプラントを選ばれました。
インプラントを入れた後のレントゲン写真です。
両隣の歯を一切削らずに歯を失った所に、インプラントの被せ物が入っています。
治療前↓
患者さんは「何でもよく噛めてインプラントにして良かったです。」と言ってくださいました。
3か月に1度のメンテナンスも欠かさず通ってくださっています。
このケースに関しては、インプランにして良かったなと本当に思います。
何より患者さんが説明に十分に納得されて、インプラントを選んでいただいたことが良かったです。
以上「インプラントにして良かった患者さんの話」でした。
皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。
宝塚市の歯医者 笹山歯科医院