歯の神経、抜くとどうなる?

院長の笹山です。

歯の神経を歯科用語で歯髄(しずい)といいます。

当院では虫歯が大きくて神経が露出する寸前まで削っても、もしくは神経が露出してしまっても、神経をなるべく抜かない処置をおこなっています。

神経が露出しなくても、神経寸前まで歯を削ると、後で痛みが出ることがあり、治療完了時には痛みがなくても、数か月後、数年後に痛みが出て神経を抜くことになることがあります。

後で痛みが出る可能性があっても、あえて神経を残すのは、歯は神経を失うと歯の寿命が短くなるからです。

寿命といっても、何年短くなるとかではなく、神経を抜くことで歯の水分が失われ、歯が割れてしまって抜歯になったり(歯根破折といいます)、歯の根の先に膿が溜まる根尖性歯周炎という病気になり、これが酷くなると抜歯に至ることもあります。

歯根破折(しこんはせつ)

 

根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)

つまり神経を抜くことで、抜歯につながる病態が生まれる可能性があるということです。

ですので、これまでなるべく神経を保存する治療をおこなうようにしてきました。

しかし、多くの神経保存治療を経験するなかで、術後何年も問題が無いケースがある反面、痛みが出て神経を抜くことになったケースもそれなりに経験してきました。

神経近くまで削った場合や、神経の一部が露出した場合にそれぞれ神経を保護する薬剤があるのですが、どれだけ丁寧に処置しても後で痛みが出るケースがあります。

・神経保存治療の流れ

術後に痛みが出る原因として、虫歯の取り残しなどの不手際を除き、適正に処置できた場合においては、

神経保存の可否は”年齢”が大きなカギになると思います。

20代くらいの人ですと細胞の活性も強く、神経に一時的なダメージが加わっても修復する力が強いです。

30代以降では、予後が良くないことが多く、40代を超えるとかなり厳しいと思います。

・神経の保存を断念したケース

真ん中の歯が歯の横から大きな虫歯になっています。

 

虫歯を慎重に削っている最中

 

虫歯の穴の上に見える赤い点が神経です。虫歯が大きすぎて神経の一部が露出しました。

このケースは患者様のご年齢その他を考慮し、患者さんに十分に説明し、同意を頂いたので神経を抜きました。

もしこのブログをお読みの方に歯科医の方であれば「えっ?MTAでいけない?」となると思われると思いますが、確かに当院でも通常ならMTAするレベルです。

年齢が神経保存のキーになることは学問として理解していましたが、多くのケースからそれが正しいことを今は実感しています。

ですので最近では年齢が比較的高い患者さんには、神経を保存できない可能性が高いことを説明し、同意が得られれば、神経を保存を断念し、神経を抜くこともあります。

神経を抜くと歯の寿命が短くなるのは確かですが、神経を抜く処置を丁寧におこなうことで寿命を延ばすことは可能です。

そして何よりも大切なことは、そのような処置に至る虫歯を作らないことですね。

日頃のセルフケアと年2~3回の検診とクリーニングで虫歯や歯周病を予防しましょう。

以上「歯の神経、抜くとどうなる?」でした。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

歯の根の手術をおこないました。

院長の笹山です。

以前こんなブログを書きました。

いつまでも治らない歯の根(神経)の治療

上のブログ記事の最後に書いた、

”では「これは通常の根の治療では治らないな。」と診断した場合、その次はどうするのでしょうか?

抜歯しかないのでしょうか?

これについてはまた別の機会にUP予定です。”

の続きが今回のブログです。

歯の根の治療をおこなっても、治りが悪い場合があります。

このケースは2度ほど歯の根の治療をおこなったのにも関わらず、完治しなかったケースです。

根っこの先に膿が溜まる病気が歯の根の治療だけでは治らない場合は、外科的に歯の根の先を少しカットするのと同時に、根の先に出来た膿の袋を取る場合があります。

根の先をカットすること歯根端切除術といい、

膿の袋を取ることを歯根嚢胞摘出術といいます。

また、再び膿の袋が出来ないように、根の先端をカットした断面に薬をつけることを逆根管充填といいます。

先日、その手術をおこないました。

CTで病巣の立体像を把握して、手術プランを決めます。

術前の状態

術中

縫合終了時

手術は局所麻酔で麻酔から縫合まで含めても1時間以内に終わります。

膿の袋の大きさなどによりますが、1週間程度は少し腫れます。

手術の痛みや術後の痛みはほとんどありません。

通常歯の根の治療は4回程度で終わります。回数や期間をかければ、治るものではないので、いたずらに長引かせず、治らない場合は外科治療も選択肢に入れて治療しています。

ただし、どんな歯でも出来る治療ではなく、大臼歯といわれる一部の奥歯や、太い神経や血管に近い歯は手術リスクが高いので、適応外です。

また手術中に骨の中の歯の根を直接観察した時に、歯の根に亀裂が見られる場合(歯根破折といいます。)があります。

歯根破折は治らないので、抜歯適応です。

こういう可能性もあるので、術前に歯根破折だった場合は抜歯までするか、それとも破折部分はそのままにして、手術を終了するか事前に患者さんに確認しておくことも必要です。

今回は幸い破折は確認されませんでしたので、順調に治っていくと思われます。

患者さん、大変お疲れさまでした。

以上「歯の根の手術をおこないました。」でした。

 

神経を抜いたのに歯が痛い…。

宝塚市 宝塚南口の笹山歯科医院 院長の笹山です。

今回は歯の神経を抜いたのに歯が痛い理由についてです。

まずは歯の神経を抜いた時期によって、痛みの理由は異なります。

1⃣神経を抜いたのは最近。

①虫歯など歯が痛くて神経を抜いた。

歯が痛くて神経を抜いた場合は、歯の根の周りまで炎症が広がっている場合があります(歯根膜炎)。歯の根の周りは、歯の神経の司っている部分ではないので、神経を抜いても痛みが続くことがあります。これは安静にしていると時間の経過と共に落ち着いてきます。(数週間から数か月かかる場合があります。)

②歯の神経が残っている。

神経は非常に複雑な形をしていて、スポンと1本の管のように抜けるわけではありません。少し神経が残る場合があります。これは後日の治療で再度麻酔をして抜くことがあります。

③神経の入っていた管に出血がある。

神経の入っている管には血管も入っています。これも神経を抜くときに一緒に抜けるのですが、炎症が大きい場合などには歯の中で再出血して、管の中で血液が充満し痛くなることがあります。

歯の中の歯髄と言われる部分には神経以外に血管も入っています↓

 

2⃣神経を抜いたのはずっと前。

過去に神経を抜いた歯でも、歯の根の外に感染源が残っていると根の周りに膿が溜まったりして、痛みが出ることがあります(根尖性歯周炎)。②で書いたように、神経は非常に複雑ですので、どんなに丁寧に神経を抜いても、一部の感染した神経が残ってしまう場合があります。その残った神経が感染源となり歯の根の周りが痛くなります。歯の根の周りが痛いと、歯の中の神経が無くても、歯そのものに痛みがあるように感じます。

もう一つの理由は歯の周りが歯周病になっている場合です。

この場合は、歯に神経が無くても、歯の周りの炎症によって、歯が痛く感じる場合があります。

以上「神経を抜いた歯が痛い。」理由についてでした。実は他にも多少の原因はあるのですが、今回は可能性が高い理由を主に説明しました。

もしかしたら、「神経を抜いたのに痛い。何で?あの歯医者さん下手?」と腹が立ったり、不安になることもあるかもしれませんが、神経を抜いた歯が痛くなるのは、それほど稀なことではありません。

まずは治療してもらった歯医者さんに相談してみるのが良いと思います。

歯科CTの活用 歯の根の治療編 何度通っても良くならない根の治療

宝塚市の歯医者、笹山歯科医院 院長の笹山です。

前回の歯科CTの活用、親知らず編

に続いて有効なCTの活用方法である”歯の根の診断””についてお話します。

まずは下のレントゲン写真をご覧ください。

赤丸の部分に根尖病巣といわれる黒い影の像がみられます。上の画像はCT画像ではなく、従来からある2次元のレントゲン画像です。

上の画像で歯の根に病巣があるのは間違いないと思われますが、根の治療をするにあたり、この部分を更に深く診断するためにCTを撮影します。↓

黒い影が大きく見えます。

更にスライスカットした画像で歯を横ではなく、正面から見ます。

この画像は3Dの立体画像であるCTでしか見ることができない画像です。

病巣はかなり大きなことが立体的にも診断できます。

治療の方法としては、従来からあるスタンダードな歯の治療をおこなうのですが、CT画像により病巣の大きさや歯の根の管の出口などの細かい情報があると、治療の精度はより確実になります。

当院では歯の根の診断や治療の精度を高めるため、必要に応じてCT撮影をおこなっています。

特に歯医者さんで根の治療を何度もしているのに良くならない場合、歯の根そのものが割れているケースなどもあります。その場合は歯の根を治療しても良くなりません。抜歯になるケースがほとんどです。そのような場合の診断にも3次元で確認できるCTが有効です。