最後の入れ歯

先日のブログ「入れ歯の力」で登場した患者さんの入れ歯が出来上がるまでの経緯を綴ります。

「入れ歯の力」はこちら↓

https://www.sasayama-dc.com/blog/3557/

3年前に初めて拝見した患者さん。当時で御年90歳。

「入れ歯が痛くて咬めない。咬み合わせも悪くて上手く食べられない。」とのことです。

拝見すると上下共に顎の骨が極度に痩せていて、入れ歯が全く安定しない。

超難症例です。

正直言いますと、どうにか出来る自信は全くありませんでした。

しかし「噛めない、外れる、痛い」をそのままにすることは出来ません。

「出来る限りやってみます」とご家族の方にお伝えして入れ歯作りを始めました。

それが3年前です。

元々の入れ歯を改造して、治療義歯とし、治療義歯を用いて型採りを行い、新しく上下の入れ歯を作りました。

*治療義歯とは・・新しい義歯にスムーズに移行できるように、義歯を改造して形や咬み合わせを調整して最終的な義歯に近づけていくためのリハビリ義歯です。

左の上下が古い入れ歯↓          右の上下が新しい入れ歯↓

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長年合わない入れ歯を使っていると、咬む位置がズレて正しい位置で咬めなくなるため、咬みあわせが安定しなくなります。

長年の経緯により案の定咬みあわせも安定せず、やむ得ず歯並びと咬みあわせも不安定なまま完成しました。*右側の新しい入れ歯も歯並びがずれています。

最初の入れ歯に比べれば良くなったものの、納得のできる仕上がりではありませんでした。

それでも、その時点ではそれが限界でした。

それから1年半ぐらい、安定剤を張り替えたり、咬み合わせを調整したりして、何とか使用してもらっていましたが、何度も咬み合わせを削ったり足したりしたので入れ歯自体が段々と劣化し始めていました。

そろそろ新しく作り直さなけらばと思いながらも、現状より良いものが出来るのかという迷いがあり、躊躇していました。

そんな頃、患者さんのご家族の方に「最後にいい入れ歯を作ってあげたい」と言わました。

「最後の入れ歯」

患者さんは93歳ですので、そういうことになります。

食事がおいしく食べられることは高齢者にとって本当に楽しみであり、大切なことです。

覚悟を決めて、再度上下の入れ歯を作り直しを提案させていただきました。

今の入れ歯をさらに改造しながら、咬みあわせを安定させ、何とか良い噛みあわせで入れ歯を完成させることが出来ました。

完成後の数回の調整と咬みあわせの一部修正した後には、患者さんに「痛くなく食べられる」とおっしゃっていただき、ご家族の方にも喜んでいただけました。

新しい上下の入れ歯↓

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「入れ歯には入れ歯の形がある」「良い入れ歯は良い形をしている」

入れ歯の達人といわれる先人の先生方の言葉どおり、最初の入れ歯や2回目の入れ歯を違って形のバランスがよくなり左右がほぼ対称になりました。

足掛け3年かかってしまいましたが、良い結果が出せてホッとしました。

義歯という装具で咬めなかったものが咬めるようになる。そして感謝していただける。

入れ歯治療は本当にやりがいのある分野です。

このケースでは本当に多くのことを学ばせていただき、自分の限界を少し超えられました。

「患者さんが一番の先生」

これも尊敬する歯科医の先生の言葉です。

本当にそう思います。

患者さんに感謝です。

お子さんの歯医者デビューその2

先日、当院で虫歯治療デビューしたR君↓

https://www.sasayama-dc.com/blog/category/%e5%b0%8f%e5%85%90%e6%ad%af%e7%a7%91/

2回目の治療は歯医者が苦手なお姉ちゃんも見学で来院。なぜかR君のお友達も一緒^^

R君のママとお姉ちゃん、R君のお友達に励ましてもらいながら治療スタート!

何と2つも虫歯治せました!!

しかも前回よりも大きな虫歯。もちろん泣いてなんかいません。

子どもの成長力&克服力は本当にすごいです。(大人の方が弱い?)

人は大人になるたび弱くなるよね~♪ セシルby浅香唯  「古い・・」(^_^;)

1回目は出来なくても大丈夫。2回目なら出来るかも。

2回目出来なくても、3回目ならいけるはず。

こんどはお姉ちゃんも治療に来ます。

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プレオルソ講習会

今日は日曜日ですが朝から歯科の講習会を受けてきました。

矯正治療の講習会です。

プレオルソというマウスピースタイプの矯正装置を使った後、歯並びを更に良くするための手技を習得するためのアドバンスコースです。

プレオルソについてはこちら↓

https://www.sasayama-dc.com/clinic/characteristics.html#point8

去年から今年にかけて歯並び・噛み合わせなどの矯正歯科治療の講習会を集中して受講しています。

そのせいか普段の診療や学校検診でお子さんを見る目が以前とは変わりました。

歯並びや噛み合わせの見方が変わったのです。

以前よりも見方が細かくなり、チェックポイントも増えました。

本格的な矯正治療が必要そうな場合の判断も早くつくようになり、早めに矯正専門医の先生に紹介できます。

今年は後半までいくつかの講習会を受講することが決まっています。秋からは単回ではなく、数か月間のコースも受講します。

ちなみに今月から当院のスタッフさん達も歯科助手や歯科衛生士の講習会に参加しています。

講習会に出ると勉強以外にも学ぶことはたくさんありますので、外の刺激に触れて医院全体が更に成長していければと思います。

これから今日の講習会のメモを成書します。これが結構しんどい(^_^.)

頑張ります!

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入れ歯の力

上下総入れ歯の93歳の患者様。

去年、当院で新しく上下の総入れ歯を作りました。

ご家族の方が先日治療の際にいらして、その患者様について私に質問されました。

「肺炎で入院したのですが、入れ歯を外しています。入れたほうがいいですか?」

弱っていて食べるどころではないので、入れ歯を入れていないということです。

入れ歯を入れていないので食事はままならず、流動食など召し上がっているとか。

その流動食も上手く飲み込めずに弱っていると。

そして入れ歯を入れていないので口が開いたままになり、意識もボーっとしてしまっていると。

私の答えは「入れ歯を入れてください。」です。

食べるのはもちろん、飲み込むだけでも入れ歯は必要です。

上下の咬み合わせがないと飲み込みにくいのです。

そのアドバイスをさせていただいたのが、先週のこと。

今朝診療前に、ご家族から電話があり、

「入れ歯を入れたら食事が完食出来たうえに、意識がはっきりして元気になりました!」

と感謝のお言葉をいただきました。

「やはり噛めるということは本当に大事なんだ」とあらためて実感しました。

「噛める」と唾液が分泌され、脳に刺激がいきますので覚醒するのです。

「噛む」と「噛める」は違います。噛める入れ歯が大事です。

この方の入れ歯作りは本当に大変だったのですが、自分の入れ歯作りのターニングポイントになったケースでした。(後日アップします)

朝から感謝のお言葉を頂けて、週明けの月曜日に気持ちの良いスタートが切れました^^

 

 

受け口は自然に治りますか?

毎年このシーズンは学校検診に出かけますが、気持ちのいいお天気の日が多くて嬉しいです。

先日も診療をお休みさせていただき、市内の幼稚園の歯科検診に行って来ました。

虫歯の子は少なかったのですが、ちょっと気になったのは噛み合わせや歯並びが心配な子が割といたことです。

特に気になったのは「受け口」です。

乳歯の時のごくごく軽い「受け口」は、永久歯に生え変わるときに自然に治ることもありますが

完全に反対になっている「受け口」の自然治癒はほとんど期待できません。

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「受け口」のことを歯科では反対咬合というのですが

ある研究結果によると乳歯列期の反対咬合が自然に治る確率は6.4%しかないというデータもあります。

歯科検診結果にかみ合わせや歯並びをチェックする項目がありますので、そういうお子さん達は歯医者さんで診てもらえるように「要受診」とさせてもらいました。

小学校低学年ぐらいまでの反対咬合はマウスピースタイプの矯正装置で治します。

当院ではプレオルソというマウスピースタイプの矯正装置を用いています。

従来からあるマウスピースタイプの物より、より効果的に治せるということで導入した治療方法です。