噛むと痛い時

食事の時に噛むと痛い、噛めない。

辛い症状ですね。

見た目は何ともないし、レントゲンを見ても虫歯じゃないのに痛くて噛めない。

こちらの歯をご覧ください。嚙む面にプラスチックの詰め物をしていますが、隙間があるわけでもなく、レントゲンでも虫歯は見当たりません。

でも痛くて噛めないんです。

見た目が虫歯じゃない、レントゲンでも虫歯はない。

そんな時どうするか?

今回は詰め物を除去しました。

患者さんにお聞きしたところ、この歯に以前の歯医者さんでプラスチックを詰める治療をして随分年数が経っていることから、レントゲンでは映らない問題がある可能性が否定できないからです。

*レントゲン写真はあくまでも影絵のようなもので、全ての虫歯を検出できるものではありません。

 

除去した後はこんな感じです。

歯にヒビが入っているのが分かりますでしょうか?

良く見えるように乾燥させてみます。

分かりやすいように亀裂をなぞってみました。

歯ぎしりや噛みしめがあると、このように亀裂が入ることがあり、噛むとこの亀裂に沿って、神経まで刺激が届きますので、痛くて嚙めないんです。

レントゲンでは虫歯は無かったのですが、噛みしめをする人に特徴的な歯髄腔の狭小化が見られます。(専門的なことなので解説は控えます。)

では、どう治療したか?

この亀裂に沿って、歯を削ります。

虫歯菌に感染している可能性もあるので、染め出し液を亀裂に沿って塗布します。

今回は少し染まりましたので、亀裂に沿って、虫歯菌が内部まで入っている可能性がありました。

亀裂に沿って、削り進めると、神経ギリギリ手前で止まりましたので、削った部分を新たに樹脂で埋め直します。

これで噛めるようになるかをしばらく経過観察します。

これでも治らない場合は、上から覆うように被せ物を入れたり、痛みを無くすために歯の神経を抜くこともありますし、最悪抜歯に至ることもあります。

歯の亀裂や破折(割れてしまった状態)は、本当に厄介な状態です。

 

痛くて噛めない原因は他にもこんなにあります。

虫歯だったり、歯の根の病気だったり、歯周病だったり、歯根破折だったり、一時的な噛みしめによる歯根膜炎だったり、顎関節症だったり。

噛むと痛い時で3日以上程度様子を見ても、痛みが変わらない場合は歯医者さんで診てもらうことをお勧めします。

悪化してからですと、治療期間が長くなったり、より大きな治療を受けなければならなくなることもあります。

噛むと痛いという歯に対して、原因が分からないのに、とりあえず嚙み合わせを削るという治療は推奨しません↓

歯が痛いのに歯医者さんに「何ともありませんね。」と言われた時にしてはいけないこと。

こちらも参考にどうぞ↓

虫歯でも歯周病でもない歯の痛みの原因

以上「噛むと痛い時の治療。」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

昭和世代が虫歯になりやすい本当の理由 

昭和世代の患者さんとお話ししていると、

「昔から歯が弱くて、苦労しています。」

とおっしゃる方が多いです。

ご自身の歯が弱い理由としておっしゃるのが、

「甘い物ばかり食べていたから。」

「歯を1日3回も磨く習慣が無かったから。」

「歯医者で検診なんて無かった時代だから。」

という理由をあげられる方が多いです。

これらも確かに虫歯になる原因ではあるのですが、

本当の理由はそこにないといわれています。

昭和世代の方が虫歯になりやすい本当の理由としてあげられているのが、

歯磨き粉にフッ素が入っていない時代に子供時代を過ごした。

です。

ご存知のように、フッ素は虫歯予防に強力に作用します。

しかし1980年代までは、ほとんどの歯磨き粉にフッ素は入っていませんでした。

1990年代半ばになって、ようやく50%の歯磨き粉にフッ素が含まれるようになり、2000年代の現代では、特殊な歯磨き粉を除いて、ほぼ全ての歯磨き粉にフッ素が入っています。

こちらの図をご覧ください↓

*ライオン歯科衛生研究所HPより引用

1985年から2015年の30年間で12歳の子供の虫歯の本数は4分の1にまで激減しています。

私も毎年、保育園の歯科検診に行っていますが、虫歯がある子はほとんどいません。

乳歯、永久歯に限らず、歯は生えてからの数年は表面のエナメル質が未成熟でとても虫歯になりやすいです。

食べ物や水、お茶などに微量のフッ素が含まれているのですが、そのフッ素を日々の食事で歯に取り込みながら、エナメル質はゆっくりと成熟して硬くなります。

しかし、生えたばかりの歯をフッ素入りの歯磨き粉で磨いていると、エナメル質を早く硬くして、強化することができます。

昭和世代の方は、幼少期にフッ素入り歯磨き粉が普及していなかったため、エナメル質が自然に成熟する前に虫歯になってしまう人が多かったのです。

一度治療した歯は、詰め物や被せ物が古くなったり、隙間から虫歯になったりで、治療を繰り返すことになり、何度も治療しているうちに、歯が弱くなり、抜歯になる可能性が高くなります。

ですので、子どもにうちに生えてくる歯を歯磨き粉のフッ素で強くして、虫歯になりにくくすることは、とても重要なことなんです。

それでは、昭和世代の歯の弱さはもうどうしようもないのかといいますと、そうではありません。

フッ素入りの歯磨き粉を上手に活用することで虫歯は予防出来ます!

こちらを参考にどうぞ↓

フッ素入り歯磨き粉の効果的な使い方

すぐ効果の出る虫歯予防法

当院は先代から通い続けている昭和世代の患者さんがたくさんいらっしゃいますが、フッ素入りの歯磨き粉を効果的に使うことによって、虫歯が激減した患者さんが多くいらっしゃいます。

皆さまも是非効果的に虫歯を予防してください。

以上「昭和世代が虫歯になりやすい本当の理由 」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

ブリッジをお勧めしないもう一つの理由 

歯を失った場合の選択肢として、入れ歯、ブリッジ、インプラントが挙げられます。

ネットで調べれば、それぞれのメリット・デメリットはすぐに分かります。

こちらも参考にどうぞ↓

ブリッジ・入れ歯・インプラントどれがいい?

 

今回はブリッジについてお話しします。

ブリッジは失った歯の両隣を削って、橋(ブリッジ)を架けるように被せる治療方法で固定性の歯です。

ブリッジのデメリットとして検索結果でよく挙がってくるのが、

①両隣の歯を削ることで、歯の寿命が短かくなる。

②2本の根っこで3本の歯を支えるので、支えている両隣の根っこが過重負担で悪くなる。(3本のブリッジを入れる場合)

です。

これは本当にその通りで、特に②については、支える歯の神経が無い場合、ブリッジが10年持つ確率は54%程度というデータもあります。

ブリッジが持たなくなるというのは、ブリッジが外れてしまうなどもありますが、一番多いトラブルは、両隣の歯の神経の無い歯が過重負担に負けて、折れてしまう(歯根破折といいます。)により抜歯なることです。

ブリッジがダメになるというより、支えている歯がダメになって抜歯になるので、再度ブリッジにすることが出来なくなります。

歯根破折

 

今回、ブリッジをお勧めしないもう一つの理由として挙げるのは、

ブリッジは不潔になりやすい。

という点です。

一番不潔になるのは、ダミーといわれる歯の根がない歯の下の部分です。

下の画像の黄色い部分ですね。

ここはどうしても歯垢(プラーク)が残りやすくなります。

しかも、残ったプラークを取り除くのが簡単ではないのです。

ダミーの部分にフロスや糸ようじが入らないからです。

また、隙間が狭いので、歯ブラシも入りません。

下図の赤矢印部分をご覧ください。ブリッジは繋がっているので、フロスや糸ようじが歯と歯の間の上から入らないことがお分かりになると思います。

 

このようなブリッジでは、スーパーフロス(商品名プロキシソフト)をいう特殊なフロスを歯と歯の間の下の部分(黄色矢印)から挿入して、ダミー部分を掃除することが出来ます。

スーパーフロスの使い方の詳細は商品ページのビデオ部分をご覧ください。(Amazonの商品ページへのリンクです。)↓

https://amzn.asia/d/glD1Gmz

私は今まで、多くのブリッジを治療のために除去してきました。

そして、ブリッジを裏返して、ダミーの汚れが取れない部分がどうなっているのかを見てきましたが、ほとんどのブリッジのダミーの下はたくさんの古い歯垢が付着していました。

下の画像は除去したブリッジを裏返して撮影したものです。

ダミー(真ん中の歯)の表面の白くなっている部分は全部歯垢です。

これは金属のブリッジですので、本来この部分は全部銀色なんです。

以前見た歯医者さんのブログで、このような画像を載せた後に「私はこの被せ物が入ったコップの水は飲めません。」「だから自分の歯にはブリッジは入れません。」と書いている記事がありました。

なかなか攻めたことを書くブログだなと思って見ていましたが、気持ちは分からなくもありません。

とにかくダミーの下に残ったままの歯垢があることで、お口の中で細菌の供給源になり、周りの歯に影響を与える可能性はありますし、口臭の原因になる可能性もあります。

ブリッジの下の汚れを取るには、毎日スーパーフロスを通すことが一番良いのですが、これはなかなかハードルが高い作業です。

一か所のブリッジのために、毎日通常の歯磨きやフロスに加えて、スーパーフロスも行わなければならないということです。

もちろん、他の通常に歯に使用しているフロスや糸ようじを辞めて、スーパーフロスに統一することも出来ます。

スーパーフロスは、ブリッジ以外の普通のフロスしても性能の高いフロスとして使えます。

しかし今度はコストの問題が発生します。

スーパーフロスはAmazonで計算しても1本27円します。

これは普通フロスと比べて、かなり割高です。

しかもスーパーフロスは、1回使い捨てです。

1日26円なら1か月で約800円、年間9600円と約1万円になってしまいます…。

もう一つの解決方法として、ブリッジの素材を金属からジルコニアという素材に変えるのも良いです。

ジルコニアブリッジ↓

ジルコニアは表面が非常に滑沢(ツルツル)で歯垢が付きにくいです。

ブリッジの形態によりますが、ジルコニアで出来たブリッジのダミーの下は、ほとんど歯垢が残っていません。

以上の事から、お口の中を常に清潔に保ちたい方にはブリッジ(特に金属製のブリッジ)はお勧めしません。

歯根破折などで歯を失うことも怖いですが、ずっと取れない汚れが残っていることもいい気分ではありません。

以上「ブリッジをお勧めしないもう一つの理由」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

歯の根の治療。何度治療しても良くならない場合の選択肢

1本の歯の根の治療に3か月以上かかることは、ほぼありません。

なかなか痛みが取れない、治療中の歯に物が当たると痛い。

すごく痛いまでいかないけど、何か他の歯と違う痛みがずっとある。

長期間このような状態が続く場合は、いつまでも同じ治療を繰り返すことは効果がありません。

何度も何度も消毒と称して、薬交換をするだけといった代わり映えのしない治療です。

稀に、仮のお薬を詰めて、数か月様子をみることもありますが、とてもレアなケースです。

では、そういった痛みは続く場合は、どうしたらいいのでしょう?

 

その説明に入る前に、日本の歯科医療の歯の根の治療についてお話しします。

歯の根の治療はとても大切な治療なのですが、日本の保険診療の歯の根の治療は、非常に費用が低く評価されています。

先進国でも、これほど低い費用で歯の根の治療を受けられる国はありません。

安くて質も高ければ最高にコスパが良いのですが、現実はなかなか厳しいです。

語弊があるかもしれませんが、時間をかければかけるほど、全く採算の合わない赤字治療です。

ですので、最近では歯の根の治療を丁寧におこなうために、自費治療でおこなう歯医者さんも増えてきています。

自費治療では、歯の根の治療に使う材料や器具、治療にかけられる時間などが大幅に変わります。

かといって、自費の根管治療ならすべてが良い結果になるとはいえません。

根本的な診断力や技術力は、自費にしたからといって上がるわけはなく、普段からきちんと診断と治療を積み重ねてきた歯科医のみが持つものです。

マイクロスコープやニッケルチタンファイル、MTAセメントといった器具や材料を使えば、上手くいくものではありません。

保険では質の高い治療は難しく、自費だからといって必ず上手くいくわけでもない。

結局どうすれば?

と思ってしまうかもしれません。

日本では歯の根の治療専門で開業する歯科医院が徐々に増えつつあります。

根管(こんかん)治療専門の医院です。

基本的に歯の根の治療以外は、一切行わない歯科医院です。

治療はすべて自費診療になりますが、根の治療を自費だけ専門でおこなう場合、結果が全てですから、治療費に伴う結果はある程度保証されていると思います。

それくらいの技術がないと、根管治療だけで医院経営を成り立たせるのは難しいからです。

まだまだ根管治療専門医院の数は少ないのですが、これからの時代は、一般開業医では難しい親知らずの抜歯を病院の口腔外科に紹介するように、歯の根の治療もケースによっては根管治療専門医院に紹介する時代になってゆくと思われます。

当院でも根の治療は難しい、なかなか良くならない場合は、患者さんとご相談の上、専門医に紹介するようにし始めています。

なかなか治らない歯の根の治療を延々と続けるのは、患者さんの貴重な時間を奪うことになるからです。

治療中の医院で、なかなか治らない時は、すぐに根管治療専門医院に行くのも選択肢としてはありますが、まずは一般開業医でセカンドオピニオンを受けるのがいいかと思います。

なぜかというと、治らない理由がシンプルな場合があり、専門医院に行くまでもなくも、他の一般開業医で解決出来てしまう場合があるからです。

一般開業医でセカンドオピニオンを受けて、その歯医者さんの診断でも、根の治療で治すのは難しいと診断された場合に、根管治療専門医院で診断を受けてみるのもいいと思います。

いつまでも終わらない治療、歯の根の手術とは?

以上「歯の根の治療。何度治療しても良くならない場合の選択肢」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

歯が痛いのに歯医者さんに「何ともありませんね。」と言われた時にしてはいけないこと。

長いタイトルになってしまいました(-_-;)

歯が痛いから、歯医者さんに行って、レントゲン写真を撮ったり、色々調べてもらったけど、「何ともないようです。」といわれてしまった。

でも痛い…。

そんな時に考えられることがいくつかあります。

①誤診、見過ごし

同業者としては耳の痛い話ですが、やはり虫歯や歯周病など痛みの原因になりやすい病気を見過ごしてしまう可能性はゼロではありません。

定期検診を受けているのに虫歯を見逃された話

②親知らずの炎症

埋まってまま生えてこなかった親知らずも、歯ぐきのポケットと交通している場合があり、歯ぐきの中で炎症を起こす場合があります。

この場合、親知らずの1本前の奥歯が虫歯や歯周病のように痛くなることがあります。

親知らずを抜歯するリスクアセスメント

③顎関節症

奥歯で硬い物を噛むと痛い時などは顎関節症になっている場合があります。

顎(あご)の痛み 顎関節症? 症状・原因・治療・セルフケア 

④副鼻腔炎(蓄膿)

上の奥歯の歯の根は、副鼻腔に近いので、上の歯が痛い時は副鼻腔炎の痛みの可能性もあります。

⑤食いしばりによる歯根膜炎(しこんまくえん)

歯根膜は目では見えない歯の根を覆っている膜です。食いしばりや歯ぎしりが強いと歯根膜が圧迫されて痛くなることがありますが、歯の根なので、歯そものものが痛くなります。

虫歯でも歯周病でもない歯の痛みの原因

⑥筋・筋膜痛

これは複雑ですので、詳しく書くとかなり長くなります。シンプルにいいますと、口の周りの筋肉などの痛みにより、歯が痛く感じることがあります。

⑦心因性の歯痛

精神疾患や心理社会的要因による歯痛。

⑧神経性の歯痛

歯や歯に関わる神経がなんらかのエラーを起こし、歯に問題がないのに、歯痛が起こる。

⑨歯にヒビが入っている。

マイクロクラックといって、歯の表面に肉眼で確認できないようなヒビが入り、そこから歯の痛みが起こる場合があります。

 

ここまで、いくつか考えられる原因を書きましたが、

歯が痛い時に、歯医者さんで患者さんにして欲しくないことを書きます。

痛みの原因の診断がついていないのに、治療を受けてしまうことです。

噛むと痛いと伝えて、原因が分からないのに、先生が「とりあえず、咬み合わせを削れば楽になりますよ。」といって歯を削ってしまったり、

虫歯でも歯周病とも診断はつかないけれど「とにかく歯が痛いからどうにかして下さい!」と伝えると、先生が「歯の神経を抜けば、痛みは治まるかもしれませんから、抜きましょう。」

診断がつかない時に、これらの治療をおこなうべきではありません。

痛みが辛い時は「とりあえず、この痛みをなんとかして欲しい。」と思われるお気持ちはよく分かりますが、とりあえずの治療を受けたことで、痛みが治らないだけでなく、更に他の問題が発生することがあるのです。

私の医院にも、前の歯医者さんで咬み合わせが悪いからといって、歯を削られて、余計に咬み合わせが悪くなったといって来られる方が数年に一度くらいの割合ですがいらっしゃいます。

これは下手すると、顎関節症など重い病気に発展するかもしれない行為です。

私も噛み合わせの調整のために、歯を削ることはありますが、とりあえず削るということは絶対にしません。

先生の診断がつかないことは仕方がないので、早めにセカンドオピニオンを受ける事をお勧めします。

私も診断がつかない時は、他の医療機関に紹介状を書いて、セカンドオピニオンを受けにいって頂くことがあります。

診断がつかないことは、恥ずかしい事ではなく、患者さんのためを考えると、とりあえず治療するという行為を慎んで、セカンドオピニオンを受けてもらうことが大切だと考えています。

以上「歯が痛いのに歯医者さんに「何ともありませんね。」と言われた時にしてはいけないこと。」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院