歯医者が自分にしない治療

歯医者が自分にしない治療

➀ 銀歯

 入れ歯

➂ 矯正

歯医者になって25年。

知り合いや先輩の歯医者の歯の治療を何度もしましたが、お口の中に、銀歯が入っている歯医者を一度も見たことがありません。

入れ歯を入れている歯医者さんはいました。

私が卒業したての頃、総入れ歯のセミナーを受けた時のご高齢の講師の先生がご自身がお使いの立派な総義歯を見せてくれました。

私の亡き祖父も歯科医でしたが、上下総入れ歯でした。

大正末期から昭和初期生まれの方は、総入れ歯の方が多かったと思います。

何しろ歯が悪くなったら、抜いて入れ歯を入れるのが、歯科治療の目的の時代で、歯を治すとかいう今の概念は、ほとんどなかった時代です。

また、有名な入れ歯のセミナーの講師の先生が、入れ歯を体感するために、自分の健康な歯を抜いて、入れ歯を入れたなんて、凄い話はあります。

ちなみに、この先生は、前述の入れ歯の講師の先生のご子息にあたります。

 

さて、銀歯も、入れ歯も入れない理由についてですが、

「歯医者さんだから、そもそも歯が悪くないんじゃないの?」

と思われるかもしれませんが、歯医者になるのは、6年間大学に通って、国家試験に合格してからですので、24歳までは歯医者ではありません。

それまでに普通に歯医者で虫歯の治療を受けている人はたくさんいます。

ただ、子ども時代に入れた銀歯を、歯医者になった後にやり直す場合は、再度銀歯を入れることはほぼないと思います。

不適合な銀歯の中身はどうなっていたか?

銀歯が取れる・外れる理由 ガム食べちゃダメ?

 

では歯医者さんは、銀歯を入れないなら、どんな歯をいれているのか?

昔なら、金歯やセラミック。

今なら、セラミックかジルコニアです。

私の父も歯科医で、父の歯の治療を何度かしましたが、奥歯はすべて金を入れています。

私の父の世代の歯医者さんは、金に対する信頼が強いです。

金は歯にとって、とても良い材料なのですが、この数年の金価格の高騰で材料費が高すぎるのと、見た目が金色であること、金属アレルギーの可能性がゼロでないことから、現在ではほとんど用いられません。

現代では被せ物については、ジルコニアが一番いい素材だと思われます。

長持ちするジルコニアクラウン

 

一方、入れ歯を入れている歯医者がいないのは、なぜでしょう?

入れ歯に関しては、やはり自分で治療していて、いいものではないという認識があるからだと思います。

理由は過去記事を参考にしてください↓

入れ歯で悩んでいる患者さん

痛くない入れ歯 シリコン入れ歯とは?

矯正に関しては、歯並びの悪い歯医者さんもいらっしゃいますが、忙しいとか、そういう理由で、歯医者になってから矯正を受ける歯科医は、あまりいません。

歯学部の学生時代は、大学病院の矯正科で矯正治療を受けている同級生が結構いました。

それでも学生のうちに、治療を終わらせていました。

矯正は年単位の治療になりますので、歯医者になってから、まして開業してからでは、なかなか時間がとれないと思います。

私は幸い、歯並びは普通でしたので、矯正は受けていませんが、もし歯並びが悪かったら、矯正治療を受けていると思います。

ここまで書いたことについて、一つの疑問を感じるかもしれません。

それは、

歯医者さんは自分が受けたくない治療を、なぜ患者さんにするのか?

これは非常に悩ましいところで、歯に対する価値観は、人それぞれで、日本では、銀歯を入れることは普通の治療であり、銀歯以外のセラミックやジルコニアなどの保険外治療は、普通の治療ではない(費用が掛かる高級な治療)という認識があります。

海外ですと、歯の治療に保険が効く国は少ないですから、銀歯は入れずに、セラミックやジルコニアを入れるのが一般的な歯の治療です。

長年日本では保険治療がおこなわれてきたので、仕方のない認識なのかと思います。

「歯が悪くなったら、虫歯を直して、銀歯を入れる。」が普通の感覚ですと、自費診療となり、費用がかかるセラミックやジルコニアはハードルの高い治療になります。

入れ歯に関しても、歯を多く失ってしまうと、ブリッジが出来なくなり、残りの選択肢が、入れ歯かインプラントしかない場合があります。

ブリッジ・入れ歯・インプラントどれがいい?

多くの歯を失ってのインプラントですと、やはり高額な治療費になりますし、手術負担も大きくなります。

そもそも、かかりつけの歯医者さんがインプラントが出来ない、おこなわない場合もあります。その場合は必然的に入れ歯になります。

 

いずれにしても、セラミックやジルコニア、インプラント、矯正は全て自費診療になり高額です。

費用対効果の高い治療ですが、誰しもが気軽に受けられる治療ではありません。

これからは予防が一番大事になります。

天然の歯は、虫歯や歯周病にならなければ、とても丈夫で機能的です。

長年歯医者をやっていますが、天然の歯の素晴らしさを実感する日々です。

セラミックやジルコニア、インプラントは人工物であり、機能的にも、審美的にも、残念ながら天然の歯には及びません。

天然の歯に近い治療というだけです。

ある統計では、健康な天然の歯の50年残存率は、99%近くあるといわれています。

失った歯をもっとも天然の歯に近い状態に戻せるインプラントでも、10年で90%程度です。

生涯に渡って、天然の歯を1本でも多く残すためには、日頃の歯ブラシなどのセルフケアの向上と、歯医者さんでの検診・クリーニングが有効です。

以上「歯医者が自分にしない治療」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

銀歯が取れやすい5つの原因

以前に銀歯が取れる理由について銀歯の材質の問題について触れました。↓

銀歯が取れる・外れる理由 ガム食べちゃダメ?

しかし、銀歯が取れやすい原因は、金属の材質だけの問題ではありません。

実は他に理由があるんです。

一つ一つ解説していきますね。

①歯の高さが低い。

歯の高さが低い場合、被せるにしても、詰めるにしても、被せ方が浅くなりがちで、外れやすくなります。

高さが低いというのは、嚙み合わせが低いのではなく、歯が歯ぐきが見えている量が少ないということです。

この場合は、元々高さが低い歯のではなく、本来は歯ぐきから出ている歯の部分が、歯ぐきに覆われている状態です。

また、元々はそこそこの高さがあったけれど、歯ぎしりで擦り減って、歯の高さが昔より低くなってしまうこともあります。

詰めたり、被せたりする場合は、歯ぐきから出ている歯の高さが高い方が、しっかり詰め込んだり、被せられるので取れにくくなります。

たとえば、下の図では、④の方が⑦より高さがあるので、銀歯は取れにくいです。

②歯ぎしりをしている。

歯ぎしりをしていると、銀歯をつけているセメントが壊れて、銀歯が取れやすくなります。

③銀歯の大きさが合っていない。

①や②のように銀歯が取れやすいと思われる場合は、普通なら詰め物で済む場合でも、被せ物にした方が取れにくくなる場合があります。

また、良くないことなのですが、そもそも削った歯に対して、隙間がある状態で銀歯を入れてしまっているケースも稀にあります。

患者さんが目で確認することは難しいのですが、0.5mmでも銀歯と歯に隙間がれば、その隙間から接着剤が溶けだして、銀歯が外れてしまうことはあります。

④歯の削り方や装着方法が良くない。

歯の削り方や、歯の装着の仕方が良くない場合でも、外れやすくなってしまうことがあります。

銀歯を入れる場合は、最低でも1~1.5mmの深さ(赤矢印部分)を削る必要があります。

しかし、取れやすい銀歯が入っていた歯を見ると、最低限必要な深さまで歯が削られていないことがあります。

 

⑤銀歯をくっ付けるセメント(接着剤)が合っていない。

歯の形やかみ合わせに合わせて、セメントを変えることで、取れにくくなります。

当院では銀歯は3種類のセメントから歯に適したものを使うようにしています。そして、銀歯では取れやすいと思われる場合は、事前にその可能性を説明して、患者さんに理解いただいてから、治療を始めるようにしています。

また、接着剤はいつか緩むものですので、何年も経ってから、銀歯が外れてしまうのは、ごく普通のことです。

すぐ取れるというのは、私の感覚では半年以内です。

装着して、半年以内に銀歯が取れるのは、何かしら改善が必要と思われます。

単につけ直しをしただけでは、また外れてしまう可能性があります。

こちらも参考にどうぞ↓

銀歯が虫歯になる理由 

以上「銀歯が取れやすい5つの原因」でした。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

銀歯が虫歯になる理由 

銀歯の隙間から虫歯になってしまった時に、

歯医者さんから、

「保険の銀歯を歯にピッタリ作るのは、難しいので、隙間から虫歯になりやすいんですよ…。」

と言われたことはありませんか?

すき間から虫歯になっている銀歯を外した治療↓

歯医者さんの言っている、

銀歯は「隙間が出来やすい。」「外れやすい。」は本当です。

間違いではありません。

しかし、上の画像の虫歯もそうなんですが、実はあまり説明されないもう一つの理由があります。

それは、

「銀歯の大きさが良くないから。」

です。

どういうことかといいますと、今回の銀歯の隙間が出来ている部分の虫歯の原因は、隙間から虫歯菌が入ったからなんですが、その入る原因の隙間は、銀歯だから出来たものではなく、

嚙み合わせにより歯が欠けたことにより、発生した隙間によるもの。

だと思われます。

上の画像の赤丸で囲んだ部分は、機能咬頭(きのうこうとう)といって、噛みあう相手側の歯と一番よく当たる部分です。

下の歯の機能咬頭はマーク部分で歯の外側(ほっぺた側)の凸部分です。

この部分に銀歯と歯の境目がくると、境目の歯が欠けてしまうことあります。

 

逆にその部分に境目っがない被せ物なら、そういう心配はなくなります↓

下の図のような、詰め物(インレー)↓ではなく、被せ物(クラウン)で直すということです。

詰め物(インレー)↓

 

被せ物(クラウン)↓

そうなると、

「最初から被せ物にすればいい。」

と思いそうですが、

すぐに被せ物にしない理由が主に2つあります。

1つ目は、

詰め物で済む大きさの虫歯を、被せるために削るということは、健康な歯も削る必要があります。

2つ目は、

被せ銀歯は見た目が目立つので、患者さんからも不評です。

やはり奥の歯でも、銀歯は目立つから入れたくないという方が増えています。

少し話は逸れますが、近年は世界的な金属価格の高騰により、保険の銀歯でも、医療財政を圧迫するようになりました。

そこで、数年前は保険適応でなかった奥歯も、現在は白い歯を入れられるようになりました。

銀歯と比べて、見た目は非常に良いのですが、材質はほぼプラスチックですので、天然の歯でも欠けてしまう奥歯には、硬さが十分とはいえず、割れたり、外れたりする可能性が高い材料です。

また、割れにくくするため、プラスチックの厚みを確保することが必要です。

厚みを確保するためには、歯を通常より多く削って、厚みを確保する必要があります。

保険の白い奥歯には、そういうデメリットもありますので、かかりつけの歯医者さんからメリットとデメリットをよくお聞きなってから、選ばれると良いと思います。

耐久性だけでいえば、明らかに銀歯に分があります。

耐久性も、見た目も欲しいということでしたら、

ジルコニアが一番良いと考えます。

というわけで今回は、

「銀歯が虫歯になる理由」でした。

銀歯だから虫歯になりやすいというだけでなく、

嚙み合わせを考えた銀歯の大きさも、虫歯になりにくくするための大事な要素ということなんですね。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

 

長持ちするジルコニアクラウン

10年以上前に歯科界にジルコニアという新たな材料が加わりました。

それまで被せ物で白い歯といえば、プラスティックかセラミックが主流でした。

ジルコニアの最大のメリットは、割れにくいということです。

従来のセラミックは、白く美しいのですが、欠けたり、割れたりするリスクがありました。

ジルコニアが導入された当初は、ジルコニアは硬すぎて、噛みあう相手側の歯を傷めるとか、擦り減らせてしまうという懸念がいわれていました。

6年前に書いた過去記事はこちら↓

フルジルコニアクラウンのデメリット

 

そして出始め当初のジルコニアは、ただ白いだけで、色調は天然の歯と程遠く、白が悪目立ちするので、目立たない奥歯にしか適応できませんでした。

あれから10年。

500ケース以上のジルコニアクラウンを入れてきました。

その経験から言えることは、

現代の歯科材料で一番良い被せ物はジルコニアということです。

一番良いというのは、材質、持ち、見た目などのトータルバランスで良いということです。

本当に天然の歯と全く見分けがつかない程の被せ物に関しては、今でもセラミックの方が勝ります。

私の治療でも、究極の審美性を求める場合は、セラミックを用いますが、

ほとんどがジルコニアで十分なケースが多いです。

現代のジルコニアは、最初に述べたような、硬すぎて歯を傷めることもなく、色調もかなり良くなり、普通に見れば天然の歯と見分けがつかないほどです。

近年の進化したジルコニアでおこなった治療例↓

フルジルコニアで審美歯科治療をおこないました。

 

ジルコニアは抗菌性が高いので、プラークが付きにくいため、隙間から虫歯になったり、周りの歯ぐきが歯周病になるリスクも低いです。

500ケース以上のジルコニア治療をおこなってきましたが、割れてしまったのは2例だけで、そのケースに関しては、割れるリスクを最初から把握していたケースでしたので、割れたのは想定範囲内であり、驚きはありませんでした。

また、ジルコニアが硬いせいで、噛みあう相手側の歯が極端に擦り減ったなどの経験もありません。

ジルコニアは保険外治療となり、決して安くはありませんが、適切におこなえば、金額に見合った価値を得られる治療と考えます。

適切におこなえばというのは、誰が治療しても同じ結果が出せるわけではないということです。

ジルコニアを被せるという行為は、歯の治療の最終的な段階であって、

➀術前の診断

➁歯の削り方

➂歯型の採り方

➃歯を作る歯科技工士さんの熟練度

➄歯の装着の仕方

⑥嚙み合わせの調整の仕方

など、すべてが揃って、ジルコニアのメリットを最大限発揮されます。

自費診療は歯医者さんによって、価格設定が異なりますが、相場より安いところは、何かしら省略されている可能性があります。

「それでも安い方がいい」と選択して、結局長持ちしないとなると、本末転倒です。

ジルコニアに限らず、自費診療で長持ちを期待されるのであれば、歯科医院選びが重要な要素になるといえるでしょう。

以上「長持ちするジルコニアクラウン」でした。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

銀歯が取れた時、歯医者に行くまでに気を付けること

食事をしていて

「ガリっ。」

「えっ、何か入ってた?」

「異物混入!?」

と口から出してみたら、銀歯や差し歯。

 

でも忙しくてすぐに歯医者に行けない、そんな時どうすれば良いのでしょうか?

今回は「銀歯が取れたらどうする?」についてお話します。

まず第一に出来る限り早く歯医者さんを予約しましょう。

すぐに行けなくても、最短で行ける日を予約することが大事です。

何故出来るだけ早いほうがいいかといいますと、接着剤が緩んで取れただけなら、つけ直しで済むことがあるからです。(虫歯で取れた場合は不可能です。)しかし、それも時間が経つと、隣の歯が少し動いたりして、つけ直し不可能になります。3日以内がベストです。長くとも2週間くらいですね。

まれに数か月前に取れた差し歯を持参して頂く場合もあるのですが、ほとんどは、つけ直し不可能になっています。

また、取れてから日にちが経つと、歯の一部が欠けてしまったりして、つけ直し出来なくなるばかりか、更に大きな治療が必要になることもあります。

ですので、食事は取れた歯の側とは、反対側でなるべく噛みましょう。

 

次に歯医者さんの予約日までの対処ですが、

まず、外れた物を歯に戻さないでください。

一度取れた歯ですので、食事の時に付けていると、また外れたり、外れた上に飲み込んでしまったり、最悪の場合ですと、飲み込んだ差し歯が、気管に詰まって窒息なんてこともありますので、絶対にやめましょう。

寝る時も歯ぎしりなどで外れる場合がありますので危険です。歯に戻してはいけません。

ただし、前歯を含む大きなブリッジなどで、外れたままだと、見栄えが悪くなってしまう場合は、かかりつけの歯医者さんに電話して、予約の日まで歯に戻していてもいいかを、確認してみて下さい。

かかりつけの歯医者さんですと、過去にレントゲン写真と撮っていれば保管してある可能性もありますので、レントゲンやカルテを見て、戻してもいいか指示してくださると思います。

稀に患者さんご自身で、差し歯をアロンアルフアなどでつけ直してしまう強者の方もいらっしゃいますが、これは絶対ダメです。

市販の接着剤はどうしても厚みが出てしまうので、ほとんどの場合、差し歯は浮き上がってくっ付いてしまい、噛み合わせが高くなります。

 

次に取れた歯が凍みてしまう場合です。

神経のある歯で、酷い場合は息を吸っただけで凍みるという場合もあります。

この場合は食事の時はなるべく、冷たい熱い物を避ける。歯磨きで口をゆすぐ時は人肌のぬるま湯でおこなうなど、なるべく歯を刺激しないことが大切です。「そんなこと当たり前!」と思われるかもしれませんが、気にせず冷たい熱いの刺激に晒し続けると、何もしなくても痛くなるほど炎症が強くなってしまうこともあります。

そうなると最悪の場合、歯の神経を抜かなければならないこともあるので、極力刺激しないことは大切なんです。

また、凍みるのが辛くても、取れた歯に何か代わりの物(ガムなど)を詰めておくことは、歯の痛みを悪化させる場合がありますのでやめましょう。

ここまで歯医者さんに行くまでに気を付けることを書きました。

 

次に、やっと歯医者さんに行ける日にすべきことがあります。

それは、取れた銀歯を忘れずに持っていくことです。

理由は2つあります。

①つけ直し出来る可能性がある。

②つけ直し出来なくても、その差し歯のどこが悪くて取れたか診断し、新しい差し歯を作る時の参考になる。

です。

こちらも参考にどうぞ↓

不適合な銀歯の中身はどうなっていたか?

銀歯が取れる・外れる理由 ガム食べちゃダメ?

以上「銀歯が取れた時、歯医者に行くまでに気を付けること」でした。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院