お問い合わせの件「削らない治療はやってますか?」

最近お問い合わせのあった件です。

「かかりつけの歯医者で虫歯が6個も見つかったんです。ネットで調べたら、MI治療っていう削らない治療があったのですが、そちらではMI治療をやってますか?」

MI治療のM.Iとは『ミニマルインターベンション(Minimal Intervention)』の略で、歯の治療において、健康な歯を削らずに、本当に悪くなったところだけを削除して修復する治療法です。

「え?虫歯だけ削るのが普通じゃないの?健康な歯を削っちゃダメでしょ!」

という声が聞こえてきそうです。

たとえばです。下のような銀歯を入れるの場合の話です。

実は、銀歯に置き換わった部分が、すべて虫歯だったわけではありません。

銀歯を作るには、銀歯が入りやすい歯の形に削る必要があり、虫歯ではない健康な歯も一部削ることがほとんどです。

逆にコンポジットレジン修復では、健康な歯はほとんど削らずに虫歯だけを削って詰めることが出来ます。

コンポジットレジンについてはこちら↓

1回で治せる白い詰め物 *治療画像あり

ですので、コンポジットレジンはMI治療といえるのです。

ただ、コンポジットレジンはプラスチックですから、強度では銀歯に劣ります。

白い詰め物のデメリット コンポジットレジンとセラミックの比較画像

広範囲の虫歯をコンポジットレジンで治しても、割れたり、欠けることがおおいので、お勧めしません。

MIにこだわり過ぎる弊害もあるのです。

 

それでは全く削らないMI治療はあるのでしょうか?

極々軽度のC0~浅いc1程度の虫歯なら、削らずにフッ素コーティングしたり、虫歯の進行止めを塗ることで、進行を抑えることが出来る場合もあります。↓

また、レーザーを照射して、削らずに虫歯だけを取る治療もあります。しかしレーザーで虫歯全部しっかり取り切るためには、虫歯の全体像を把握する必要があり、ある程度は従来からある回転切削器具で削る必要があります。

同様にカリソルブといわれる虫歯を削らずに溶かして取る方法も、全く削らずにというのは難しいです。

ですので、極々初期の虫歯(Co~C1)以外に関しては、削らずに治療するというのは、かなり難しいと思われます。

当院では虫歯と健全な歯の境界を確認する場合は、高倍率ルーペやマイクロスコープを用いて、強拡大視野で確認するようにしています。

虫歯を取り残さないため、健康な歯をなるべく削らないためには、まず虫歯の部分がしっかり見えていければ、MI治療は出来ません。

当然、肉眼でそれらを完全に区別することはほぼ不可能です。最低でも3倍以上のルーペを使わなければ、MI治療は出来ません。

6倍のルーペ(形成の仕上げやCRで使用)

 

3倍ルーペ(常時装着。当院では肉眼での治療はおこなっていません。)

 

マイクロスコープ(CR、根管治療、形成の仕上げで使用)

なるべく歯を削りたくないお気持ちは、どなたも同じだと思います。

歯医者さんで、いきなり多くの虫歯を指摘された場合で、ご自身でまったく自覚出来なかったり、説明を受けても納得できない場合は、セカンドオピニオンを求めることをおススメします。

急に虫歯がたくさん その理由は? 歯医者を変えたら虫歯が10個も?

 

以上「削らない治療は出来ませんか?」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

銀歯が取れやすい5つの原因

以前に銀歯が取れる理由について銀歯の材質の問題について触れました。↓

銀歯が取れる・外れる理由 ガム食べちゃダメ?

しかし、銀歯が取れやすい原因は、金属の材質だけの問題ではありません。

実は他に理由があるんです。

一つ一つ解説していきますね。

①歯の高さが低い。

歯の高さが低い場合、被せるにしても、詰めるにしても、被せ方が浅くなりがちで、外れやすくなります。

高さが低いというのは、嚙み合わせが低いのではなく、歯が歯ぐきが見えている量が少ないということです。

この場合は、元々高さが低い歯のではなく、本来は歯ぐきから出ている歯の部分が、歯ぐきに覆われている状態です。

また、元々はそこそこの高さがあったけれど、歯ぎしりで擦り減って、歯の高さが昔より低くなってしまうこともあります。

詰めたり、被せたりする場合は、歯ぐきから出ている歯の高さが高い方が、しっかり詰め込んだり、被せられるので取れにくくなります。

たとえば、下の図では、④の方が⑦より高さがあるので、銀歯は取れにくいです。

②歯ぎしりをしている。

歯ぎしりをしていると、銀歯をつけているセメントが壊れて、銀歯が取れやすくなります。

③銀歯の大きさが合っていない。

①や②のように銀歯が取れやすいと思われる場合は、普通なら詰め物で済む場合でも、被せ物にした方が取れにくくなる場合があります。

また、良くないことなのですが、そもそも削った歯に対して、隙間がある状態で銀歯を入れてしまっているケースも稀にあります。

患者さんが目で確認することは難しいのですが、0.5mmでも銀歯と歯に隙間がれば、その隙間から接着剤が溶けだして、銀歯が外れてしまうことはあります。

④歯の削り方や装着方法が良くない。

歯の削り方や、歯の装着の仕方が良くない場合でも、外れやすくなってしまうことがあります。

銀歯を入れる場合は、最低でも1~1.5mmの深さ(赤矢印部分)を削る必要があります。

しかし、取れやすい銀歯が入っていた歯を見ると、最低限必要な深さまで歯が削られていないことがあります。

 

⑤銀歯をくっ付けるセメント(接着剤)が合っていない。

歯の形やかみ合わせに合わせて、セメントを変えることで、取れにくくなります。

当院では銀歯は3種類のセメントから歯に適したものを使うようにしています。そして、銀歯では取れやすいと思われる場合は、事前にその可能性を説明して、患者さんに理解いただいてから、治療を始めるようにしています。

また、接着剤はいつか緩むものですので、何年も経ってから、銀歯が外れてしまうのは、ごく普通のことです。

すぐ取れるというのは、私の感覚では半年以内です。

装着して、半年以内に銀歯が取れるのは、何かしら改善が必要と思われます。

単につけ直しをしただけでは、また外れてしまう可能性があります。

こちらも参考にどうぞ↓

銀歯が虫歯になる理由 

以上「銀歯が取れやすい5つの原因」でした。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

銀歯が虫歯になる理由 

銀歯の隙間から虫歯になってしまった時に、

歯医者さんから、

「保険の銀歯を歯にピッタリ作るのは、難しいので、隙間から虫歯になりやすいんですよ…。」

と言われたことはありませんか?

すき間から虫歯になっている銀歯を外した治療↓

歯医者さんの言っている、

銀歯は「隙間が出来やすい。」「外れやすい。」は本当です。

間違いではありません。

しかし、上の画像の虫歯もそうなんですが、実はあまり説明されないもう一つの理由があります。

それは、

「銀歯の大きさが良くないから。」

です。

どういうことかといいますと、今回の銀歯の隙間が出来ている部分の虫歯の原因は、隙間から虫歯菌が入ったからなんですが、その入る原因の隙間は、銀歯だから出来たものではなく、

嚙み合わせにより歯が欠けたことにより、発生した隙間によるもの。

だと思われます。

上の画像の赤丸で囲んだ部分は、機能咬頭(きのうこうとう)といって、噛みあう相手側の歯と一番よく当たる部分です。

下の歯の機能咬頭はマーク部分で歯の外側(ほっぺた側)の凸部分です。

この部分に銀歯と歯の境目がくると、境目の歯が欠けてしまうことあります。

 

逆にその部分に境目っがない被せ物なら、そういう心配はなくなります↓

下の図のような、詰め物(インレー)↓ではなく、被せ物(クラウン)で直すということです。

詰め物(インレー)↓

 

被せ物(クラウン)↓

そうなると、

「最初から被せ物にすればいい。」

と思いそうですが、

すぐに被せ物にしない理由が主に2つあります。

1つ目は、

詰め物で済む大きさの虫歯を、被せるために削るということは、健康な歯も削る必要があります。

2つ目は、

被せ銀歯は見た目が目立つので、患者さんからも不評です。

やはり奥の歯でも、銀歯は目立つから入れたくないという方が増えています。

少し話は逸れますが、近年は世界的な金属価格の高騰により、保険の銀歯でも、医療財政を圧迫するようになりました。

そこで、数年前は保険適応でなかった奥歯も、現在は白い歯を入れられるようになりました。

銀歯と比べて、見た目は非常に良いのですが、材質はほぼプラスチックですので、天然の歯でも欠けてしまう奥歯には、硬さが十分とはいえず、割れたり、外れたりする可能性が高い材料です。

また、割れにくくするため、プラスチックの厚みを確保することが必要です。

厚みを確保するためには、歯を通常より多く削って、厚みを確保する必要があります。

保険の白い奥歯には、そういうデメリットもありますので、かかりつけの歯医者さんからメリットとデメリットをよくお聞きなってから、選ばれると良いと思います。

耐久性だけでいえば、明らかに銀歯に分があります。

耐久性も、見た目も欲しいということでしたら、

ジルコニアが一番良いと考えます。

というわけで今回は、

「銀歯が虫歯になる理由」でした。

銀歯だから虫歯になりやすいというだけでなく、

嚙み合わせを考えた銀歯の大きさも、虫歯になりにくくするための大事な要素ということなんですね。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

 

銀歯が取れた時、歯医者に行くまでに気を付けること

食事をしていて

「ガリっ。」

「えっ、何か入ってた?」

「異物混入!?」

と口から出してみたら、銀歯や差し歯。

 

でも忙しくてすぐに歯医者に行けない、そんな時どうすれば良いのでしょうか?

今回は「銀歯が取れたらどうする?」についてお話します。

まず第一に出来る限り早く歯医者さんを予約しましょう。

すぐに行けなくても、最短で行ける日を予約することが大事です。

何故出来るだけ早いほうがいいかといいますと、接着剤が緩んで取れただけなら、つけ直しで済むことがあるからです。(虫歯で取れた場合は不可能です。)しかし、それも時間が経つと、隣の歯が少し動いたりして、つけ直し不可能になります。3日以内がベストです。長くとも2週間くらいですね。

まれに数か月前に取れた差し歯を持参して頂く場合もあるのですが、ほとんどは、つけ直し不可能になっています。

また、取れてから日にちが経つと、歯の一部が欠けてしまったりして、つけ直し出来なくなるばかりか、更に大きな治療が必要になることもあります。

ですので、食事は取れた歯の側とは、反対側でなるべく噛みましょう。

 

次に歯医者さんの予約日までの対処ですが、

まず、外れた物を歯に戻さないでください。

一度取れた歯ですので、食事の時に付けていると、また外れたり、外れた上に飲み込んでしまったり、最悪の場合ですと、飲み込んだ差し歯が、気管に詰まって窒息なんてこともありますので、絶対にやめましょう。

寝る時も歯ぎしりなどで外れる場合がありますので危険です。歯に戻してはいけません。

ただし、前歯を含む大きなブリッジなどで、外れたままだと、見栄えが悪くなってしまう場合は、かかりつけの歯医者さんに電話して、予約の日まで歯に戻していてもいいかを、確認してみて下さい。

かかりつけの歯医者さんですと、過去にレントゲン写真と撮っていれば保管してある可能性もありますので、レントゲンやカルテを見て、戻してもいいか指示してくださると思います。

稀に患者さんご自身で、差し歯をアロンアルフアなどでつけ直してしまう強者の方もいらっしゃいますが、これは絶対ダメです。

市販の接着剤はどうしても厚みが出てしまうので、ほとんどの場合、差し歯は浮き上がってくっ付いてしまい、噛み合わせが高くなります。

 

次に取れた歯が凍みてしまう場合です。

神経のある歯で、酷い場合は息を吸っただけで凍みるという場合もあります。

この場合は食事の時はなるべく、冷たい熱い物を避ける。歯磨きで口をゆすぐ時は人肌のぬるま湯でおこなうなど、なるべく歯を刺激しないことが大切です。「そんなこと当たり前!」と思われるかもしれませんが、気にせず冷たい熱いの刺激に晒し続けると、何もしなくても痛くなるほど炎症が強くなってしまうこともあります。

そうなると最悪の場合、歯の神経を抜かなければならないこともあるので、極力刺激しないことは大切なんです。

また、凍みるのが辛くても、取れた歯に何か代わりの物(ガムなど)を詰めておくことは、歯の痛みを悪化させる場合がありますのでやめましょう。

ここまで歯医者さんに行くまでに気を付けることを書きました。

 

次に、やっと歯医者さんに行ける日にすべきことがあります。

それは、取れた銀歯を忘れずに持っていくことです。

理由は2つあります。

①つけ直し出来る可能性がある。

②つけ直し出来なくても、その差し歯のどこが悪くて取れたか診断し、新しい差し歯を作る時の参考になる。

です。

こちらも参考にどうぞ↓

不適合な銀歯の中身はどうなっていたか?

銀歯が取れる・外れる理由 ガム食べちゃダメ?

以上「銀歯が取れた時、歯医者に行くまでに気を付けること」でした。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

不適合な銀歯の中身はどうなっていたか?

院長の笹山です。

古い銀歯の治療の話です。下の画像の銀歯は歯ぐきが痩せて、銀歯と歯茎の境目に段差が出来てしまい、白い歯垢が溜まっています。このままではこの境目から虫歯や歯周病になる可能性があります。

銀歯を削って外すと中の歯はこんな感じになっています。

銀歯をくっつけていた接着剤の多くは溶け出しており、銀歯の中まで歯垢が侵入している様子が見られます。そして歯の一部が虫歯になっています。

この歯は過去に神経を抜いているので、このような状態でも痛みは感じません。

このまま銀歯を外さないで放置して置いたらどうなってしまうのでしょう?

神経が無いので痛みの無いまま、銀歯の内部に虫歯が進行し、内部が朽ちてしまうので、ある日突然銀歯が取れてしまいます。

銀歯が取れた患者さんは「取れたから、付け直ししてもらおう。」と歯医者さんに銀歯を持って来てくださるのですが、内部が虫歯で朽ちているので、付け直しはほぼ不可能です。

それどころか虫歯の進行度合いによっては、抜歯するしかない程に悪化していることもあります。

歯茎が痩せて、段差が出来ても、歯ブラシが上手に出来れば、このような事態は回避できますが、相当丁寧にブラッシングしないと難しいです。

銀歯が古いというだけでやり直しの必要はありませんが、このように合わなくなった銀歯に歯垢が溜まりやすくなっている場合はやり直した方が良いと考えています。

こちらも参考にどうぞ↓

銀歯が虫歯になる理由 

歯を強くする方法

 

以上「不適合な銀歯の中身はどうなっていたか?」でした。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院