歯が弱い人に知ってほしいこと

いつも長文で読みづらいブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、本日は歯の強さ、弱さについて書いてみようと思います。

 

毎日毎日、歯でお困りの方を治療をしています。

「他院で作った入れ歯が合わない。」

「骨が少ないのでインプラントは出来ないと言われた。」

「治療中の歯の痛みが取れない。」

そんな中、時々患者さんから

「私は昔から歯が弱くて…苦労してるんです。」

と、言われることがあります。

歯の強さに関する話なんですが、実際のところ、歯が弱い人、強い人はいるのでしょうか?

結論からいいますと、歯が強い人、弱い人は確かにいらっしゃいます。

しかし、それだから歯がどんどん悪くなるというわけでもないんです。

歯の強さをいうのは、一般的に歯の硬さを示します。

毎日大なり小なり歯を削って治療してきましたが、歯の硬さに関しては、それほど差がないと感じています。

もちろん「この患者さんの歯は硬くて、なかなか削れないな。」ということは、ごく稀にありますが、それでも、その歯は硬いにも関わらず治療が必要になっているという事は、虫歯になっているということです。

実際に歯のエナメル質の硬さは、人それぞれに多少の差はあるとしても、極端に硬いとか、柔らかくて脆いということはありません。

歯が弱いと感じている人は、虫歯になりやすかったり、歯周病で歯を失ったりしていることを総称して「歯が弱い」とおっしゃっていると思うのですが、虫歯になりやすい原因には、歯の硬さよりも、もっと重要な因子があります。

それは

①唾液の量と質

②食生活習慣

③プラークコントロール

です。

 

それぞれ説明していきますね。

①唾液の量と質

唾液の量や質が低いと、虫歯になりやすくなります。

食事をすると、歯の表面は酸性に傾き、一時的に溶けだします。

しかし、唾液によって、中性に戻り、溶けだした歯の表面は修復されます。

この修復するスピードは、生まれつき人それぞれ違います。

また、そもそも唾液の量が少ないと修復スピードが落ちますし、唾液には殺菌成分や保湿成分があるので、お口の中を健康に保つ機能があります。

唾液の量が少ないと、お口の中が乾燥し、虫歯になりやすくなります。

口呼吸が癖になっている人や、ドライマウスの人は、虫歯になりやすいのです。

ですので、

唾液の量や質と虫歯になりやすさ

は、大きな関係があります。

 

②食生活習慣

食生活習慣とは、食べたり飲んだりする物の種類と飲食する回数です。

こちらを参考にどうぞ↓

虫歯になりやすいお子さん。仕上げ磨きで大切なこと。

③プラークコントロール 

プラークコントロールとは歯垢(細菌の塊)を綺麗に落として、お口の中を清潔に保つことです。

簡単に言いますと、

歯磨きを上手におこなって磨き残しを極力減らすことです。

このプラークコントロールをいうのはもっとも重要で、虫歯や歯周病の原因は、

虫歯菌や歯周病菌による細菌感染症ですから、磨き残しをいかに少なくするかはとても大事です。

これは、少し言いにくいことなのですが、

「歯が弱い。」

と、おっしゃっている多くの方のプラークコントロールは

悪いです。

つまり磨けていないということです。

もちろん、患者さんなりに一生懸命磨いていらっしゃるのですが、実際は磨けていないことが多いです。

そして、歯医者さんでちゃんとした歯磨きの仕方、歯間ケアの仕方、予防の仕方を習っていない方が多いです。

どんなに良い治療をしても、プラークコントロールが悪ければ、必ず虫歯は再発し、歯周病は悪化します。

歯を磨いているのに虫歯が出来る理由 

フッ素入り歯磨き粉の効果的な使い方

すぐ効果の出る虫歯予防法

 

歯が弱いとお悩みの方は、

「出来るだけ虫歯が再発しない材料や治療法で歯を治療をするのと同時に、適切なセルフケアを身に着ける」

ことが大切です。

当院でも、歯の状態の良くない方には、念入りにセルフケアの仕方をお話しして、ご自身である程度出来るようになっていただきます。

当院ではインプラント治療もおこなっていますが、インプラントはプラークコントロールが悪いと長持ちしませんので、プラークコントロールが良くない方にはインプラント治療をおこなわないスタンスです。

まとめ

歯の硬さは、人それぞれ多少の差はあるけれど、硬い、柔らかいはそこまで大きなリスクファクターではありません。

それよりも、

①唾液の量と質

②食生活習慣

③プラークコントロール

が重要な因子です。

特に②と③は、患者さんご自身で改善可能ですので、歯が弱いとお悩みの方は是非見直していただきたいです。

そのために、かかりつけの歯医者さんで、正しい予防歯科の知識とセルフケアを教わって頂ければと思います。

当院では患者さん1人1人の歯や歯ぐきの状態に合う無理のない予防方法を優しく提案しています。

 

以上「歯が弱い人に知ってほしいこと」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

お問い合わせの件「削らない治療はやってますか?」

最近お問い合わせのあった件です。

「かかりつけの歯医者で虫歯が6個も見つかったんです。ネットで調べたら、MI治療っていう削らない治療があったのですが、そちらではMI治療をやってますか?」

MI治療のM.Iとは『ミニマルインターベンション(Minimal Intervention)』の略で、歯の治療において、健康な歯を削らずに、本当に悪くなったところだけを削除して修復する治療法です。

「え?虫歯だけ削るのが普通じゃないの?健康な歯を削っちゃダメでしょ!」

という声が聞こえてきそうです。

たとえばです。下のような銀歯を入れるの場合の話です。

実は、銀歯に置き換わった部分が、すべて虫歯だったわけではありません。

銀歯を作るには、銀歯が入りやすい歯の形に削る必要があり、虫歯ではない健康な歯も一部削ることがほとんどです。

逆にコンポジットレジン修復では、健康な歯はほとんど削らずに虫歯だけを削って詰めることが出来ます。

コンポジットレジンについてはこちら↓

1回で治せる白い詰め物 *治療画像あり

ですので、コンポジットレジンはMI治療といえるのです。

ただ、コンポジットレジンはプラスチックですから、強度では銀歯に劣ります。

白い詰め物のデメリット コンポジットレジンとセラミックの比較画像

広範囲の虫歯をコンポジットレジンで治しても、割れたり、欠けることがおおいので、お勧めしません。

MIにこだわり過ぎる弊害もあるのです。

 

それでは全く削らないMI治療はあるのでしょうか?

極々軽度のC0~浅いc1程度の虫歯なら、削らずにフッ素コーティングしたり、虫歯の進行止めを塗ることで、進行を抑えることが出来る場合もあります。↓

また、レーザーを照射して、削らずに虫歯だけを取る治療もあります。しかしレーザーで虫歯全部しっかり取り切るためには、虫歯の全体像を把握する必要があり、ある程度は従来からある回転切削器具で削る必要があります。

同様にカリソルブといわれる虫歯を削らずに溶かして取る方法も、全く削らずにというのは難しいです。

ですので、極々初期の虫歯(Co~C1)以外に関しては、削らずに治療するというのは、かなり難しいと思われます。

当院では虫歯と健全な歯の境界を確認する場合は、高倍率ルーペやマイクロスコープを用いて、強拡大視野で確認するようにしています。

虫歯を取り残さないため、健康な歯をなるべく削らないためには、まず虫歯の部分がしっかり見えていければ、MI治療は出来ません。

当然、肉眼でそれらを完全に区別することはほぼ不可能です。最低でも3倍以上のルーペを使わなければ、MI治療は出来ません。

6倍のルーペ(形成の仕上げやCRで使用)

 

3倍ルーペ(常時装着。当院では肉眼での治療はおこなっていません。)

 

マイクロスコープ(CR、根管治療、形成の仕上げで使用)

なるべく歯を削りたくないお気持ちは、どなたも同じだと思います。

歯医者さんで、いきなり多くの虫歯を指摘された場合で、ご自身でまったく自覚出来なかったり、説明を受けても納得できない場合は、セカンドオピニオンを求めることをおススメします。

急に虫歯がたくさん その理由は? 歯医者を変えたら虫歯が10個も?

 

以上「削らない治療は出来ませんか?」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

1回で治せる白い詰め物 *治療画像あり

歯を治療する時は、なるべく元通りに近い見た目で治したいですね。

白く治す治療で最もポピュラーな材料が

コンポジットレジン

という材料です。

平たくいうと、歯科用の樹脂、プラスチックです。

私も毎日の診療で使っているのですが、とても良い材料です。

虫歯を削った穴にペースト状のコンポジットレジンを埋めて、光を照射すると、固まります。

メリットは、

➀歯型を取らずに1回で直せること。

➁歯に近い色で直せること。

➂健康な歯をほとんど削らずに詰められること。

です。

デメリットは、

➀欠けたり、割れたりしやすい。

➁経年劣化で変色する。

➂耐久性が低いので、大きな範囲を埋めるのには向かない。

デメリット➂のように、大きな範囲でなく、小さな範囲を治しても、

後々剥がれてしまい、隙間から虫歯になることはあります。

 

以下の治療例をご覧ください。

「噛むと痛い。」と来院された患者さん。奥歯の後ろ側を、コンポジットレジンで直していますが、剥がれて、歯との境目に隙間が生じています。

 

コンポジットレジンの一部を剥がすと、歯の内部に虫歯が進行していました。

 

虫歯菌の酸により、溶けてボロボロになった象牙質が出てきます。

 

後ろに生えている歯の間も虫歯になっていました。よくあることです。

コンポジットレジンの問題は、その材質も剥がれたり、壊れる理由ではあるのですが、詰める時になるべく剥がれにくくする詰め方をすることが大事です。

 

術後。

細心の注意を払って、再度コンポジットレジンで治しました。

これで剥がれるようなら、コンポジットレジンより硬い金属やセラミックなどで治す必要があります。

 

コンポジットレジンを詰めるのに向かない場所(非適応)は、

噛む力が強くかかる部分です。

それは、

奥歯の噛む面の一部だったり、

前歯の先端などです。

特に前歯の先端は、詰めても非常に取れやすく、欠けやすいです。

上の前歯の先端をコンポジットレジンで治した一例↓

上記のように一旦綺麗に治すことは可能ですが、すぐに欠けてしまう可能性もあります。

奥歯の噛む面については、患者さん固有の噛む力や、残っている歯の量によって、適応であるか判断します。

また、詰める技術によっても、持ちは変わります。

コンポジットレジンは、適応を間違えず、詰め方を気を付ければ、

1回で治療が終わり、見た目が自然で、健康な歯を削らない。

という、とてもメリットの多い治療方法です。

コンポジットレジンを詰めても、

「すぐに取れる。」

「欠ける。」

お困りの方は、その歯が適応であるかを歯医者さんにお聞きするのもいいかもしれません。

比較画像で見るプラスチックとセラミックの違い 

以上「1回で治せる白い詰め物」でした。

皆様のお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

歯を強くする方法

「先生、歯を強くする方法ってないんですか?」

患者さんから時々聞かれる質問です。

また、患者さんから

「歯を鍛えるために、硬い物をよく食べているんです。」

「歯を強くするために、カルシウムを摂るようにしています。」

と言われることもあります。

結論を言いますと、残念ながら

大人になってから、歯を強くすることは出来ません。😢

カルシウムを摂っても、歯は丈夫になりません。

硬いものを食べても、歯は鍛えられないどころか、歯が欠けたり、割れたりする可能性があります。

大人になったら、

歯を守ることしか出来ません。

歯を強くしたいというお考えの方は、

「いつまでも歯を失いたくない。」

「入れ歯になりたくない。」

「自分の歯で何でも食べられるようにしたい。」

色々な思いがあると思います。

歯を強くすることは出来ませんが、歯を守ることは出来ます。

歯を守るために、

「歯磨きを頑張りましょう!」

では、ありきたりですので、違う視点でお話しします。

まず、歯を守るためには、

歯を大切に扱うことです。

「そんなに分かってる~。」

と聞こえてきそうですが、

意外に皆さんが出来ていないことがあります。

歯を大切に扱うためには、

歯が、

①擦り減ったり、

②溶けたり、

③欠けたりしないようにします。

 

①歯が擦り減るのは、歯ぎしりや噛みしめを防止することで減らせます。

歯のすり減り 歯ぎしり? 咬み合わせ? マウスピース

 

②歯が溶けるのは、酸蝕症(さんしょくしょう)といって、酸性度の高い、飲食物を控えることで防げます。

酸蝕症についてはこちらのサイトが分かりやすいです。(神奈川県歯科医師会HPより)

歯が溶ける!?「酸蝕症」とは?

 

古い記事ですが、酸蝕症の治療についてはこちらをどうぞ↓

酸蝕症のシミュレーションワックスアップ 

 

③歯が欠けるのは、硬い物を噛まないことです。硬いというのは、お肉とかではなく、ガリっと噛むものです。

硬いせんべい、飲み物の氷、硬い軟骨などです。

歳と共に、歯に内部の水分は減り、脆く、欠けやすくなります。

欠けた歯の神経を保存しました。

 

あとは、乱暴な歯磨きなどを続けているのと、歯の表面に目に見えない細かい傷が出来てしまい、そこに磨き残しが残りやすくなります。

歯の表面のミクロの傷を修復することは、可能といわれています。

ミクロの傷を修復するためのリナメルトリートメントペーストという歯磨き粉があります。

リナメル トリートメントペースト

https://www.oralcare.co.jp/product/post.html

私もリナメルを使用したことがありますが、確かに歯の表面がツルツルになります。*特に宣伝したいわけではありません、個人の感想です(笑)

大切なことは、歯磨きを一生懸命することだけでなく、フッ素入りの歯磨き粉やトリートメントペーストを正しく使用することと、歯の表面を傷めないようにすることです。

以上「歯を強くする方法」でした。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

銀歯が虫歯になる理由 

銀歯の隙間から虫歯になってしまった時に、

歯医者さんから、

「保険の銀歯を歯にピッタリ作るのは、難しいので、隙間から虫歯になりやすいんですよ…。」

と言われたことはありませんか?

すき間から虫歯になっている銀歯を外した治療↓

歯医者さんの言っている、

銀歯は「隙間が出来やすい。」「外れやすい。」は本当です。

間違いではありません。

しかし、上の画像の虫歯もそうなんですが、実はあまり説明されないもう一つの理由があります。

それは、

「銀歯の大きさが良くないから。」

です。

どういうことかといいますと、今回の銀歯の隙間が出来ている部分の虫歯の原因は、隙間から虫歯菌が入ったからなんですが、その入る原因の隙間は、銀歯だから出来たものではなく、

嚙み合わせにより歯が欠けたことにより、発生した隙間によるもの。

だと思われます。

上の画像の赤丸で囲んだ部分は、機能咬頭(きのうこうとう)といって、噛みあう相手側の歯と一番よく当たる部分です。

下の歯の機能咬頭はマーク部分で歯の外側(ほっぺた側)の凸部分です。

この部分に銀歯と歯の境目がくると、境目の歯が欠けてしまうことあります。

 

逆にその部分に境目っがない被せ物なら、そういう心配はなくなります↓

下の図のような、詰め物(インレー)↓ではなく、被せ物(クラウン)で直すということです。

詰め物(インレー)↓

 

被せ物(クラウン)↓

そうなると、

「最初から被せ物にすればいい。」

と思いそうですが、

すぐに被せ物にしない理由が主に2つあります。

1つ目は、

詰め物で済む大きさの虫歯を、被せるために削るということは、健康な歯も削る必要があります。

2つ目は、

被せ銀歯は見た目が目立つので、患者さんからも不評です。

やはり奥の歯でも、銀歯は目立つから入れたくないという方が増えています。

少し話は逸れますが、近年は世界的な金属価格の高騰により、保険の銀歯でも、医療財政を圧迫するようになりました。

そこで、数年前は保険適応でなかった奥歯も、現在は白い歯を入れられるようになりました。

銀歯と比べて、見た目は非常に良いのですが、材質はほぼプラスチックですので、天然の歯でも欠けてしまう奥歯には、硬さが十分とはいえず、割れたり、外れたりする可能性が高い材料です。

また、割れにくくするため、プラスチックの厚みを確保することが必要です。

厚みを確保するためには、歯を通常より多く削って、厚みを確保する必要があります。

保険の白い奥歯には、そういうデメリットもありますので、かかりつけの歯医者さんからメリットとデメリットをよくお聞きなってから、選ばれると良いと思います。

耐久性だけでいえば、明らかに銀歯に分があります。

耐久性も、見た目も欲しいということでしたら、

ジルコニアが一番良いと考えます。

というわけで今回は、

「銀歯が虫歯になる理由」でした。

銀歯だから虫歯になりやすいというだけでなく、

嚙み合わせを考えた銀歯の大きさも、虫歯になりにくくするための大事な要素ということなんですね。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院