入れ歯難民って何?

東京新聞に以下のような記事が掲載されました。

タイトルは

あなたも「入れ歯難民」になる恐れ つくり手の歯科技工士が不足する見通し 高齢化に後継者不足…その理由は

です。

ここからは私の記事です。

入れ歯を作っているのは歯科医師ではなく、国家資格を持った歯科技工士です。

*入れ歯を作る歯科医師も稀にいます。

その歯科技工士さんが年々減っています。

理由は低賃金、重労働など色々あります。

ここ10年くらいで技工士さん不足や労働環境確保のために、入れ歯を作る納期が長くなったり、入れ歯の制作料も随分と上がりましたので、技工士さんが減っていると身近に感じます。

技術の進歩により、被せ物や詰め物はハンドメイドじゃなくてもCADCAMという方法で機械でほぼ自動で作れるようになりましたが、入れ歯はまだまだハンドメイドでないと作れない部分が多いです。

ただ、最近は予防で歯医者さんに通う人が増え、歯を失う人が減ったことにより、入れ歯が必要な患者さんは減りつつあるので、技工士さんを養成する学校では、これから技工士さんになる人に、入れ歯の制作方法を積極的に教えなくなると思います。

なぜなら入れ歯の製作技術は非常に複雑で、そう簡単に習得出来ませんし、難しい入れ歯作りとなると、習得におそらく10年以上はかかると思います。

しかし、これから10年先には、先ほど書いた通り、入れ歯の患者さんがもっと減っていて、せっかく苦労して修得した入れ歯を作る技術を生かす機会が減っていきます。

ということで、これから減るニーズに時間をかけて教育するとは思えません。

問題は今後の20年です。

私の感覚ですと、今後20年はまだ入れ歯が必要な方が大勢いらっしゃると思います。

現在既に入れ歯を使っている方、これから入れ歯になる方。

そういう方々が入れ歯を必要な時に、技工士さん不足により、良い入れ歯が出来ないかもしれないのです。

入れ歯というものは、歯医者や技工士さんの技術力によって、結果に明確な差が出る治療です。

2本か3本歯がない場合の入れ歯に関しては、そこまで差は出ませんが、それ以上の無い本数を補う入れ歯ですと、差が出ます。

差と言うのは、装着感、快適性、痛み、違和感の有無などです。

特に難症例となる場合、その差が大きく出るのと、入れ歯の材質や製造工程において、保険適応の入れ歯では解決が難しい場合が多いです。

治療で小さな虫歯を治すのは、歯科医に技術で大きな差は出ませんが、快適で痛みの少ない入れ歯を使いたい方は、慎重に歯科医院選びをおこなって欲しいです。

当院には「入れ歯が合わないから、インプラントを考えている。」と相談に来られる患者さんがいらっしゃいますが、使っている入れ歯を見ると、入れ歯が合わないというよりも、その入れ歯だから合わないということもあります。

つまり入れ歯を作り直せば、インプラントにしなくても済むかもしれないということもあるということです。

宣伝ではありませんが、入れ歯でお困りの方に情報提供したいので書きます。

当院は長年入れ歯治療に力を入れてきました。

多くの難症例も経験してきました。

シリコン入れ歯、マグネット入れ歯、目立たない入れ歯、インプラントオーバーデンチャーなど、保険適応の入れ歯で痛くて噛めない、違和感が強く満足できない方に高度な入れ歯を提供することが可能です。

*上記は保険外診療となります。

入れ歯でお悩みの方はご相談下さい。

よろしければ、こちらも参考にどうぞ

入れ歯が痛くて使えない患者さん

入れ歯で悩んでいる患者さん

ノンクラスプデンチャー バネのない入れ歯

ノンクラスプデンチャー 6年目

以上「入れ歯難民って何?」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

 

 

 

 

 

 

インプラント入れ歯って何? インプラントオーバーデンチャーの話

歯を失った場合の選択肢として

ブリッジ、入れ歯、インプラント、自家歯牙移植などがあります。

・ブリッジ

・部分入れ歯

・インプラント

 

 

その中で今回ご紹介するのが、

インプラント入れ歯です。

インプラント単体でもないし、入れ歯単体でもない。

入れ歯とインプラントのハイブリット型の治療で、

インプラントオーバーデンチャー

といいます。

「インプラントの上(オーバー)に入れ歯(デンチャー)が乗っかっている」ということです。

分かりづらいかもしれません。

通常インプラントといえば、歯がない所に、人工歯根を埋めて、その上に被せ物をつけて、あたかも歯が生えたように治すことを示します↓

 

そして、いわゆる通常の入れ歯はこんな感じです。見辛くてスミマセン。拡大してご覧下さい↓

 

インプラントでサポートされたインプラントオーバーデンチャーは、こんな感じです↓

たとえば、

軟らかい土の上に、硬い板を敷いて、その板の上に、人が何人も乗ったら、板は、沈み込みます。

でも、

軟らかい土に、硬い支柱が何本も植えてあれば、

硬い板の上に人が乗っても、板は支柱に支えられ、沈み込みません。

つまり普通の入れ歯の弱点である、

⓵入れ歯が沈み込んで、歯ぐきに食い込んで痛い。

②入れ歯のバネをかけている歯に、負担がかかって抜けてしまう。

➂入れ歯が接する歯ぐきが、沈み込みの負担により、年々痩せて、入れ歯の安定が悪くなる。

などの弱点を軽減できる方法です。

また、食事をした時に入れ歯が沈みこまないので、しっかりと噛めるようになります。

更に、歯の無い本数が多く、大きな入れ歯を入れている人が、通常のインプラントのように固定性の被せ物を入れようとすると、かなりの本数とインプラントを入れなければならず、費用や手術の負担が大きくなります。

そんな時に、入れ歯にインプラントを併用した

インプラントオーバーデンチャー

が、とても有効な治療方法となります。

これなら、少ない費用と手術負担で、入れ歯の弱点をカバーできます。

 

インプラントオーバーデンチャーの実例をご覧下さい。

左側の金色の丸い2つの金属の下にインプラント埋まっており、金色の部分は、マグネットのアタッチメントです。

 

入れ歯を装着した状態↓

入れ歯を裏返すと、先ほどのお口のマグネットにくっ付くマグネットが装着されています。

このインプラントが2本あることによって、先程のイラスト図のように、入れ歯は、沈み込みにくくなり、マグネットの作用で浮き上がりにくくなります。

そして、入れ歯は安定し、痛みや不具合が出にくくなります。

入れ歯は慣れているので、入れ歯のままでも良いけれど、痛くなく、外れにくい入れ歯にしたい方に最適の治療方法です。

寝たきりになってもインプラントは大丈夫なの?どうなるの?

以上「インプラント入れ歯って何? インプラントオーバーデンチャーの話」でした。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

 

歯医者ってどうやって手術の練習をしているの?

皆さん、意外にご存じないのですが、抜歯は歯を抜く手術です。

患者さん「抜歯って手術なんですか?」

私「麻酔をして、歯を抜いて、血が出ますし、場合によっては縫合もしますので、手術ですよ。」

患者さん「そういわれれば、そうですね。」

抜歯は歯医者さんで日常的におこなわれているので、難しい親知らず抜歯などを除けば、日々抜歯手術を続けているうち自然と上手くなります。

もう初めて抜歯した時の記憶はありませんが、勤務医の頃に、グラグラで指で引っ張っても抜けるくらいの簡単な抜歯からさせてもらった気がします。

しかし歯ぐきの手術(形成外科や歯周病の手術)やインプラント手術は、特別な歯科医院でない限り、日常的におこなっているものではありません。

やっているうちに上手くはなりますが、最初のハードルはかなり高いです。

簡単なインプラント手術というものは存在しないからです。

やったことがない手術をいきなり患者さんで実践するわけにもいきませんので、一般的には講習会に参加して、実習を通じて練習します。

実習といっても、練習で人間の歯ぐきや骨を削るわけにはいきません。

練習用模型で実習する場合もありますが、模型ではリアリティーに欠けます。

そんな時、よく使用されるのがこちらです。↓

ブタの下顎です。精肉店さんで購入可能です。

もちろん人間とは違いますが、同じ哺乳類ですので、基本的な構造は一緒です。

歯も歯ぐきも骨もちゃんとあります。

手術を学ぶセミナーでは、解凍されたブタを使って、本物のメスやハサミを使って、練習をすることがあります。

 

先日参加したセミナーの様子。

講師の先生がレクチャー動画を見ながら、手技を教えてくれます。

私も手術形式のセミナーでは、過去に何度もブタで何度も練習してきました。

ブタのおかげで手術が出来るようになった部分もありますので、ブタに感謝です。

勤務医の頃にも勤め先の院長先生が手術の勉強会を開くのに、ブタを揃えて実習させてくださったことがあります。

今考えると、凄く手間のかかることをやっていただいたことが分かるので、感謝です。

今回受けたセミナーでは、骨が少なくなってインプラントが出来ない場合に、人工の骨を補ってインプラントが出来るようになる手術方法を学んできました。

GBRという方法です。

当院では既に導入している方法で、過去に他の先生のセミナーも何度か受けていますが、色んな先生の方法や考え方を学んで、より安全で確実な手術が出来るようになるために受講しています。

大阪で受けたのですが、四国や九州からも参加者がいて、とても人気のあるセミナーでした。

こちらも参考にどうぞ↓

インプラント手術は痛いですか?

以上「歯医者ってどうやって手術の練習をしているの?」でした。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

歯医者が自分にしない治療

歯医者が自分にしない治療

➀ 銀歯

 入れ歯

➂ 矯正

歯医者になって25年。

知り合いや先輩の歯医者の歯の治療を何度もしましたが、お口の中に、銀歯が入っている歯医者を一度も見たことがありません。

入れ歯を入れている歯医者さんはいました。

私が卒業したての頃、総入れ歯のセミナーを受けた時のご高齢の講師の先生がご自身がお使いの立派な総義歯を見せてくれました。

私の亡き祖父も歯科医でしたが、上下総入れ歯でした。

大正末期から昭和初期生まれの方は、総入れ歯の方が多かったと思います。

何しろ歯が悪くなったら、抜いて入れ歯を入れるのが、歯科治療の目的の時代で、歯を治すとかいう今の概念は、ほとんどなかった時代です。

また、有名な入れ歯のセミナーの講師の先生が、入れ歯を体感するために、自分の健康な歯を抜いて、入れ歯を入れたなんて、凄い話はあります。

ちなみに、この先生は、前述の入れ歯の講師の先生のご子息にあたります。

 

さて、銀歯も、入れ歯も入れない理由についてですが、

「歯医者さんだから、そもそも歯が悪くないんじゃないの?」

と思われるかもしれませんが、歯医者になるのは、6年間大学に通って、国家試験に合格してからですので、24歳までは歯医者ではありません。

それまでに普通に歯医者で虫歯の治療を受けている人はたくさんいます。

ただ、子ども時代に入れた銀歯を、歯医者になった後にやり直す場合は、再度銀歯を入れることはほぼないと思います。

不適合な銀歯の中身はどうなっていたか?

銀歯が取れる・外れる理由 ガム食べちゃダメ?

 

では歯医者さんは、銀歯を入れないなら、どんな歯をいれているのか?

昔なら、金歯やセラミック。

今なら、セラミックかジルコニアです。

私の父も歯科医で、父の歯の治療を何度かしましたが、奥歯はすべて金を入れています。

私の父の世代の歯医者さんは、金に対する信頼が強いです。

金は歯にとって、とても良い材料なのですが、この数年の金価格の高騰で材料費が高すぎるのと、見た目が金色であること、金属アレルギーの可能性がゼロでないことから、現在ではほとんど用いられません。

現代では被せ物については、ジルコニアが一番いい素材だと思われます。

長持ちするジルコニアクラウン

 

一方、入れ歯を入れている歯医者がいないのは、なぜでしょう?

入れ歯に関しては、やはり自分で治療していて、いいものではないという認識があるからだと思います。

理由は過去記事を参考にしてください↓

入れ歯で悩んでいる患者さん

痛くない入れ歯 シリコン入れ歯とは?

矯正に関しては、歯並びの悪い歯医者さんもいらっしゃいますが、忙しいとか、そういう理由で、歯医者になってから矯正を受ける歯科医は、あまりいません。

歯学部の学生時代は、大学病院の矯正科で矯正治療を受けている同級生が結構いました。

それでも学生のうちに、治療を終わらせていました。

矯正は年単位の治療になりますので、歯医者になってから、まして開業してからでは、なかなか時間がとれないと思います。

私は幸い、歯並びは普通でしたので、矯正は受けていませんが、もし歯並びが悪かったら、矯正治療を受けていると思います。

ここまで書いたことについて、一つの疑問を感じるかもしれません。

それは、

歯医者さんは自分が受けたくない治療を、なぜ患者さんにするのか?

これは非常に悩ましいところで、歯に対する価値観は、人それぞれで、日本では、銀歯を入れることは普通の治療であり、銀歯以外のセラミックやジルコニアなどの保険外治療は、普通の治療ではない(費用が掛かる高級な治療)という認識があります。

海外ですと、歯の治療に保険が効く国は少ないですから、銀歯は入れずに、セラミックやジルコニアを入れるのが一般的な歯の治療です。

長年日本では保険治療がおこなわれてきたので、仕方のない認識なのかと思います。

「歯が悪くなったら、虫歯を直して、銀歯を入れる。」が普通の感覚ですと、自費診療となり、費用がかかるセラミックやジルコニアはハードルの高い治療になります。

入れ歯に関しても、歯を多く失ってしまうと、ブリッジが出来なくなり、残りの選択肢が、入れ歯かインプラントしかない場合があります。

ブリッジ・入れ歯・インプラントどれがいい?

多くの歯を失ってのインプラントですと、やはり高額な治療費になりますし、手術負担も大きくなります。

そもそも、かかりつけの歯医者さんがインプラントが出来ない、おこなわない場合もあります。その場合は必然的に入れ歯になります。

 

いずれにしても、セラミックやジルコニア、インプラント、矯正は全て自費診療になり高額です。

費用対効果の高い治療ですが、誰しもが気軽に受けられる治療ではありません。

これからは予防が一番大事になります。

天然の歯は、虫歯や歯周病にならなければ、とても丈夫で機能的です。

長年歯医者をやっていますが、天然の歯の素晴らしさを実感する日々です。

セラミックやジルコニア、インプラントは人工物であり、機能的にも、審美的にも、残念ながら天然の歯には及びません。

天然の歯に近い治療というだけです。

ある統計では、健康な天然の歯の50年残存率は、99%近くあるといわれています。

失った歯をもっとも天然の歯に近い状態に戻せるインプラントでも、10年で90%程度です。

生涯に渡って、天然の歯を1本でも多く残すためには、日頃の歯ブラシなどのセルフケアの向上と、歯医者さんでの検診・クリーニングが有効です。

以上「歯医者が自分にしない治療」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

ガイデッドサージェリー 安全なインプラント治療のために

ガイデットサージェリー、初めて聞く言葉かもしれません。

ガイデットサージェリーは、インプラント手術をより安全に行うための方法です。

下の画像をご覧ください。上あごの歯と歯ぐきの画像です。

青囲いの歯4本は、歯根破折により抜歯せざるを得なくなり、その後、左側の赤丸部分に2本のインプラントを入れて、新しく入れ歯を作る予定です。

上の画像の赤丸部分に2か所にインプラント入れる計画をしていて、入れる位置を数mmも左右前後にズレたくないとします。

なぜ数mmもずれたくないかといいますと、その部分の骨の状態や噛み合わせなど、最適な位置がそこだからです。

しかし、手術に際して、治療ユニットに仰向けに寝ている患者さんの口の中を覗き込みながら、この赤丸の位置から数mmズレずにインプラントを入れることは、ほぼ不可能です。

覗き込みながら治療する時点でかなり難しくなるのですが、

もう一つ決定的な理由があります。

それは、

インプラントを入れたい部分の周りに歯がないため、入れるための位置の指標がないからです。

たとえば、下のレントゲン画像のようなインプラントを入れる場合でしたらどうでしょう?

向かって右下に1本のインプラントが入っています。

このインプラントの手前(左側)には、ご自身の歯があります。

このインプラントを入れるためには、手前の歯の数mm右側に入れればいいので、手前の歯が位置の指標になります。

指標があるのとないのでは、インプラントの入れやすさは大きく異なります。

例えるなら、

何も置いていない広い運動場に

「この運動場の”真ん中”にボールを置いてください。」

と言われたとします。

しかし運動場を空から見下ろしでもしない限り、どこが”真ん中”かは正確には分かりません。

ですので、ボールを”真ん中”に置くのは難しいですが、もし運動場の”真ん中”にポールが立っていたら、どうでしょう?

そのポールの横にボールを置けばほぼ真ん中に置けますね。

たとえが伝わりましたでしょうか?

インプラントを入れる際に、その近くに入れる位置の指標があるのとないのでは、入れやすさが全然違うんです。

最初の画像に戻ります。

インプラントを入れたい位置の前後に、位置の指標となる歯がありません。

この位置に前後左右、しかも傾きもズレずに入れるためには、

このようなものを使います↓ これをガイドといいます。ガイドとは、”旅のガイド”と同じで、案内とか誘導みたいな意味ですね。

このガイドは、事前に撮影したCT画像を使って、シミュレーションソフトで私がデザインしたものを、ガイド製作会社に発注して製作されたものです。

実際にシミュレーションした時の画像↓

 

 

実際の手術では、

このようにガイドを口の中に装着し、ガイドの穴にドリルを入れて、骨に穴を開けると「ここに入れたい。」と計画した位置に、ほぼ狂いなくインプラントを入れることが出来ます。

術後です。ヒーリングアバットメントが見えています。

事前に計画した位置と同じ位置に無事インプラントが入りました。

このようなガイド使ってインプラント手術をおこなうことを、

ガイデットサージェリー

(ガイドされた手術)といいます。

このガイドを用いるメリットは、位置を迷うことなく、インプラントを入れられますので、手術が早く終わり、術者も患者さんもとても楽です。

以前にも書きましたが、早く(正確に)手術を終えると、患者さんの術後の痛みも楽になります。

インプラント手術は痛いですか?

以上「ガイデットサージェリー 安全なインプラント治療のために」でした。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院