インプラントしない歯医者。

院長の笹山です。

インプラント治療の話です。

インプラント治療は、どこの歯医者さんでも受けられる治療ではありません。

なぜインプラントをする歯医者さんと、しない歯医者さんがあるのでしょう。

私が大学を卒業したのは20数年前ですが、インプラントはまだ一般的な治療ではなく、歯科医の間でも懐疑的な治療でした。

「あんな金属のネジを骨に埋め込むなんて、長持ちするわけがない。危険だ。」と言う先生が普通にいた時代です。

ですので、私より少し上の世代の先生は、インプラントをしない先生も結構いらっしゃいます。

当時は私自身もインプラントが本当に長持ちするのか判断できなかったので、実際にインプラント治療を始めたのは少し遅く、卒後10年過ぎた頃からでした。

そして現在ではインプラントは特別な治療ではなく、普通におこなわれる時代になりました。

失った歯を補う治療方法として、インプラントとブリッジと入れ歯を比較すると、インプラントが一番経過良好(長持ちする)であるというデータが数多く出ています。

私自身もインプラントの症例数を重ね、その後の経過を診るようになってから、インプラントは適切に診断し、適切に行えば、患者さんのためになる良い治療だと今は確信しています。

歯医者がインプラントを出来たほうがいいのか、出来なくてもいいのかに関しては、出来た方がいいと思います。

インプラントだけ他の先生に紹介して手術してもらうという先生もいらっしゃいますが、やはり自分の患者さんには、自ら手術を出来る方がいいと思いますし、患者さんも安心されると思います。

インプラントは治療後のメンテナンスも非常に大切ですので、他の先生にしてもらったインプラントを、インプラントの知識がない先生がフォローするのは、やや難しいかと思います。

ではなぜインプラントをしない先生がいらっしゃるのか?

私が考える理由は5つあります。

①インプラント治療は、大学で習っただけでは出来るようにならない。

今の歯学部の学生はインプラントの講義も普通にあるようですが、それはあくまでも触りの部分だけで、その授業を受けたからといって、手術が出来るわけではありません。

私が学生の頃は、そもそもインプラントの授業はほぼ皆無でした。

ですのでインプラント治療を身につけるには、大学を卒業後、仕事をしながら休みの日に何度も講習会に参加して学ぶ必要がありました。

1回講習会に出ただけで、出来るようになる治療ではありませんし、するべきではない治療です。

インプラント治療は、歯ぐきを切る、骨に穴を開ける、骨にインプラントを入れる、切った歯ぐきを縫う、歯型を採る、歯を被せる。

文章で書くとこれだけなのですが、解剖学的な知識や手術手技の知識を考えると相当な量の勉強をしないと、安全確実に出来るようにはなりません。

ちなみに私の場合は、勤務医時代にインプラント治療をおこなっている歯科医院に勤務し、その後勤めた歯科医院で日本口腔インプラント学会専門医の先生に直接指導していただき、初めての手術から3回ほどは、その先生にオペ介助についていただいて、やっと1人で簡単なケースから取り組めるようになったぐらいです。

ですので、そこまでの時間と費用をかけてまで学ぶ価値がないと考える先生もいらっしゃると思います。

② そもそも外科手術が好きではない。

歯医者だから抜歯くらいはするけれど「そもそも血を見るのが嫌い。」「外科処置はしたくない。」という歯医者さんは意外に多くいます。特に男性の歯科医です。

実はインプラント治療は抜歯に比べて、出血も少ないので、私自身は難しい親知らずの抜歯をするのと比べれば、インプラント治療の方が楽だと感じているのですが、骨に穴を開けて、金属製のインプラントを埋めて置いてくるという行為は、歯を削ったりするのとは違う感覚ですので、心理的なハードルが高いと感じる歯科医の先生もいらっしゃると思います。

私は特に外科手術が好きというわけではありませんが、インプラント治療を出来ないというのは、自分の医院の患者さんにとって不利益だと考えて、インプラント治療を取り入れました。

③ インプラント治療に必要な器具の導入にはかなりの費用がかかる。

インプラントに使用する器具を導入するだけで、軽自動車1台分くらいの費用がかかります。

今の時代は術前のCT撮影は必須です。パノラマレントゲンやデンタルレントゲンといわれる2次元のレントゲン写真だけで手術するのは危険です。ですのでCTを撮影できるレントゲン装置がない歯科医院で手術を受けるべきではありません。

CTの値段もここ10年くらいでだいぶ下がりましたので、最近の若い先生方は開業時からCT撮影出来るレントゲン装置を導入するのが普通になっています。

値段が下がったといっても、今でも高級外車が1台購入できるほどの値段はしますが…。

そして技術を身につけるには、前述のような講習会に何度も参加しなければなりません。これも総額で軽自動車1台分くらいかかります。

それだけの投資をしても、実際にインプラント治療をしなければ、投資した分は回収出来ないと考えて、導入しない先生もいらっしゃいます。

④ インプラントは準備が大変。

インプラントは通常の治療と違って、手術器具の準備や、手術する環境、スタッフへの手術介助の教育などのインプラントをおこなうためだけに新たなシステムを作ることが必要で多くの時間と労力を必要とします。

当院でも手術器具の専用準備リストを使用し、2重チェックをかけで準備をしています。

手術に使う外科器具の量が多いので、一度に滅菌出来ません。日々の治療に使う器具も毎日滅菌していますので、その合間を縫って、手術日の3日以上前から、滅菌器で滅菌をしています。

手術日の前日からは、手術をするユニットも手術仕様に変更します。

ちなみに手術後の片付けも細かい器具が多くて、なかなか大変です。

こういうことを手間を考えると、インプラントは煩わしいなと思う先生もいらっしゃるかもしれません。

⑤インプラント治療をおこなわない経営方針。

最近では小児歯科専門や予防歯科専門で開業されている歯医者さんもあり、外科処置は極力おこなわない経営方針も歯医者さんもあります。

 

以上の①~⑤がインプラント治療をしない先生の理由ではないかと思っています。

インプラント治療は正しくおこなえば、本当に良い治療です。

ちなみに当院はインプラント治療専門医院ではないので、すべてのケースに対応しているわけではありません。

以下の4つには対応しておりません。

①骨が弱い、またはほとんど無いケース。

②前歯のインプラント治療。

③歯がほとんど無い、もしくは1本も無い方へのインプラント治療。

④他院でおこなったインプラント治療のリカバリー。

この4つはインプラント専門医レベルでないと良い結果が出せないと考えておりますので、当院ではおこなっておりません。

当院は普通に骨がある部位に、基本に忠実に丁寧に手術することをメインにインプラント治療をおこなっています。

当院での一例↓

以上「インプラントしない歯医者。」でした。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院