5年持たない治療、10年持つ治療

あの暑さはどこへやら、急に寒くなり、あっという間に10月も終わりに近づき、年末年始のことを考える時期になりました。

当院は平成24年に先代から医院を継承して、13年が過ぎようとしています。

自分がおこなった治療の10年後の結果が段々と分かり始めました。

勤務医の頃は何軒かの歯医者に勤めましたが、一番長く勤めた歯科医院でも5年ですので、最長で5年後の治療結果しか見られませんでした。

自分がおこなった治療がどのくらい持つのか分からないと、患者さんに「どれくらい持ちますか?」と聞かれても答えられません。

歯にも色々な状態があり、そもそも弱い歯もありますから、一概には言えないのですが、10年のデータの蓄積があるので、今なら最低これくらいは持ちますと言えるようになりました。

データが蓄積することによって、この歯はあまり持たない、この歯なら持ちそうということも分かるようになってきました。

これは治療する側にとって、とても大きな財産です。

勤務医時代に自費治療をやり始めたばかりの時は、セラミックの被せ物1つおこなうのも恐る恐るでした。

「高い費用を頂いて、すぐに外れたり、痛くなったらどうしよう…。」

特に歯の根の治療をおこなった後に歯を被せる場合は不安が拭えなかったです。

神経を抜く治療をおこなったり、既に神経の無い歯に膿が溜まって、再治療して被せたりする場合があるのですが、歯の根の病気は再発することがあるからです。

いつまでも治らない歯の根(神経)の治療

根の病気が再発した場合、最悪のケースでは被せた歯を壊さないと再治療できない場合もあります。

そうすると入れて間もないセラミックの歯を壊さなければなりません。

短期間であれば、無償でのやり直しになる可能性が高いのですが、それよりも「高い歯を入れたのにやり直し?」と患者さんに思われるのが一番心苦しいです。

今は歯の根の治療をした場合でも、この歯なら再発しやすそうだとか、この歯ならまず再発しないだろうとかも分かってきました。

仮に再発しても被せ物を外さずに、外科的に歯の根の病気を切除する治療も普通におこなえるようになりました。

歯の根の治療。何度治療しても良くならない場合の選択肢

また、再発の可能性がある歯はすぐに最終的な被せ物を入れないで、丈夫な仮歯を入れて、数か月から長くて1年くらい様子を見てから、最終的に被せることもあります。

ここまで書きましたが、じゃあセラミックやジルコニアは何年持つのか?という話なんですが、当院では5年以内にやり直しになったケースは1~2%程度です。

10年ですと、5%ぐらいでしょうか?

10年も経つと、被せ物に問題が無くても、歯の根が折れて歯根破折してしまったり、歯周病で抜けてしまう歯も出てきます。

歯根破折

歯周病になりやすい場所

それでも被せ物そのものが駄目になったというのは、10年でもあまりないです。

ちゃんと診断して、丁寧に治療していれば、このくらいの結果になる気がします。

今は自費の被せ物のほとんどがジルコニアになりましたので、セラミックのように割れる、欠けるということがほぼ無くなりました。

これもやり直しが減った大きな要因です。

平成の最後の方ぐらいまではセラミックとジルコニアが半々くらいでしたが、令和に入ってからは、90%以上をジルコニアでおこなうようになりました。

進化するフルジルコニアクラウン

また、そもそもあと数年でダメになるかもしれない弱い歯にセラミックやジルコニアを入れることはしませんから、そこそこの状態に歯に被せた場合は、これくらい持つのは妥当な結果かもしれません。

実際、当院では自費の詰め物や被せ物や関しては5年保証を設けていますが、保証を適応したのは、この10年でも片手で治まる数です。

ちなみに自費入れ歯は1年保証です。

入れ歯は被せ物と違い、複雑な形態をしており、細い留め具など壊れやすい構造物が多いからです。ただし被せ物と違い、壊れてもほとんど修理で対応できます。

ですので1年しか保証をしていませんが、1年後に壊れても全部作り直しということはありません。

入れ歯は修理をしながら長く使うというのが基本的な考え方です。

自費の入れ歯は基本構造を金属にして強く作っていますので、修理しながら10年以上使えることもあります。

以上「5年持たない治療、10年持つ治療 」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市 宝塚南口駅すぐの歯医者 笹山歯科医院

インプラントが合わない患者さん

インプラントが合わない患者さん。

①タバコを吸っている。

タバコはインプラントの寿命を短くします。

喫煙本数が多ければ多いほど、インプラントを短期間で喪失するリスクが上がります。

また、インプラントをおこなう際に、人工骨や歯茎を移植する付帯手術の結果も悪くなりがちです。人工骨や歯ぐきが定着しなかったり、感染してしまう可能性が高くなります。

煙草をやめるか、喫煙本数を減らすことが必要です。

②歯周病が進行している。

インプラントは骨に支えられており、天然の歯と同じように歯周病になると抜けてしまいます。

天然の歯はある程度ぐらつきがあっても、すぐには抜けません、治療により回復する場合もありますが、インプラントがぐらついた場合は100%に近い確率で抜けてしまいます。

インプラントをする前に、歯周病の進行を止めることが必要です。

③痛い時だけ歯医者さんに行く。

インプラントは治療後のメンテナンス受けないとと長持ちしません。

インプラントの被せ物が緩んだり、インプラントの周りの歯ぐきに炎症が起きた時に、早めに対処しないと喪失リスクが上がります。

上記の異常は自分では察知できません。自覚した際には手遅れということもあります。

インプラントをするなら、メンテナンスや定期検診は必須となります。

④抜けそうな歯や、治療済みの歯がたくさんある。

 

弱い歯がたくさんある場合、インプラントをしても、他の歯が数年後に抜けてしまった場合、またそこもインプラントにするか考えなければなりません。費用がかかる治療ですので、経済的負担が大きくなります。

治療済みの歯がたくさんある場合、歯を失った部分だけをどうするかだけでなく、全体的な治療計画や期間、概算費用を提案してくれる歯医者さんを選びましょう。

⑤歯ぎしりが酷い。

インプラントは歯ぎしりに対して、非常に弱いです。

酷い歯ぎしりのある方は、インプラントが歯ぎしりで抜けてしまう恐れがあります。

酷い歯ぎしりがあって、インプラントをする場合は、夜間のマウスピースが必須です。

 

いかがでしたでしょうか?

現在の歯科界において、歯を失った時の第一選択肢はインプラントです。

ブリッジ・入れ歯・インプラントどれがいい?

インプラント・ブリッジ どっち? 

第一選択肢である理由は、適切におこなえば、ブリッジや入れ歯と比べて、長持ちする治療だということです。

しかし、上記のような合わない条件下でおこなわれたインプラントは長持ちしません。

インプラントを検討されている方は、医院選びも含めて慎重に検討されることをお勧めします。

以上「インプラントが合わない患者さん 」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

削らないし、矯正装置もつけない、歯並び改善方法

前歯の見た目が気になるから直したいけど、歯を削ったり、矯正治療まではしたくない、しかも短期間で治したい。

そんな時にこんな方法もあります。

患者さんは上下前歯の隙間が広いのを気にされて来院されました。

近々結婚式に出席予定があり、それまでに何とか出来ませんかとのこと。

治療後↓

隙間が小さくなっています。

何をしたか?

歯を削らずに、歯型を採り、付け爪のような歯を作って、歯科用の接着剤で歯に貼り付けました。

製作したのがコチラ。厚さ約1ミリのネイルのような歯です↓

型取り、装着の2回で終了し、歯も一切削っていません。

リスクとしては、剥がれたり、欠けたりする可能性があります。

適応症例は限られますが、適応であれば有効な治療方法です。(保険適応外)

 

10年前の記事ですが、こちらも参考にどうぞ(こちらは少々削ったケースです。)↓

ラミネートベニアによる審美歯科治療

以上「削らないし、矯正装置もつけない、歯並び改善方法」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

インプラントにして良かった患者さんの話

歯を失った場合には、失った部分を補う治療方針として、

入れ歯、インプラント、ブリッジ、歯牙移植、矯正治療、何も入れない

などの選択肢があります。

ブリッジ・入れ歯・インプラントどれがいい?

 

失った歯の両隣に歯がある場合、現実的にはブリッジかインプラントの2択になると思います。

両隣の歯を削ってブリッジ↓

 

両隣の歯を削らずにインプラント↓

どちらがいいですか?

と、聞かれればインプラントなのですが、ブリッジを選ばれる場合もあります。

しかし、今からお伝えするケースはインプラントにした方がいいケースです。

当院では複数の選択肢がある場合、それぞれの治療方法のメリット・デメリットを説明し、患者さんに選んでいただくというのが基本方針ですので、「インプラントがいいですよ。」という説明はしませんが、このケースに限っては「インプラントの方がいいです。」と、ハッキリとお伝えしました。

なぜインプラントを薦めたのかを実際の治療経過で説明しますので、ご覧ください。

治療前の患者さんのレントゲンです。向かって右側の下の奥歯、右から2番目の白く映っている歯の根が割れてしまっています。

拡大画像です。

このブログで何度も書いてきた歯根破折(しこんはせつ)という状態で、治すことが出来ないので抜歯となります。

歯根破折

画像で見る歯根破折

患者さんは入れ歯は嫌だということで、選択肢から入れ歯は除外され、ブリッジとインプラントの説明をおこなうことにしました。

実は、この患者さんはブリッジを選ぶと大きなリスクがあります。

先程のレントゲン写真で割れてしまった歯を抜いて数か月後のお口の写真です。向かって右側の1本奥歯がないところが抜歯した歯です。

ブリッジにする場合、通常は①と②の歯を削りますが、この患者さんの②の歯は内側に倒れて生えています。

①も②も共に神経があり、一度も治療されたことのない、健康で綺麗な歯です。

ブリッジにする場合、①と②の生えている方向が同じであることが大事です。

ここではその理由は割愛します。

この場合は内側に倒れて生えている②を大きく削らないと、①に方向(平行性)を揃えられません。

②の歯をそこそこに削って接着ブリッジという方法もあるにはあるのですが、1歯欠損の割にスパンが長いことや咬合力を考慮して除外しました。(専門的な内容です。)

大きく削ると②の神経が露出するので、露出した神経を抜くことになります。

ここで大事な話があります。

神経を抜くと、歯は割れやすくなります。

今回、歯根破折で抜いた歯も過去の治療により神経が無い歯でした。

また、神経を抜いた歯を連結したブリッジの寿命は10年で60%程度といわれており、神経のない歯がまた割れて抜歯になる可能性が高いです。

失った1本の奥歯を補うために、もう1本の歯の神経を抜いてブリッジにして、10年後にその歯が残っている可能性は60%だとしたらどうでしょう。

①の歯が無くなると、元の歯も含めると2本連続で奥歯は無くなります。

これを両隣の歯でブリッジにすると、過重負担になり、更に歯を失うと可能性が高まるという悪循環に陥ります。

2歯連続欠損のブリッジはかなり寿命が短いです↓

 

そこでようやくインプラントにするにしても、2本のインプラントでは費用は単純に2倍になります。

ここまで書いたブログのような説明を患者さんにおこないました。

たしか説明だけで3回ぐらい通って頂いた記憶があります。

そんなにインプラント推すの?と思われるかもしれませんが、そうではありません。

それだけ説明してリスクも納得して頂いて、ブリッジを選ばれたのなら、歯科医としては少し不本意ですが、結果としては全然構わないのです。

一番大切なことは、

リスクを理解した上で、患者さん自身が治療を選んだという事実です。

逆に良くないのは、今のような説明がないまま、安易に歯の神経を抜いてブリッジを入れてしまうことです。

 

さて、治療の結果を見てみましょう。

患者さんは両隣の健康な歯を削ったり、ブリッジのために健康な歯の神経を抜くのを回避するためにインプラントを選ばれました。

インプラントを入れた後のレントゲン写真です。

両隣の歯を一切削らずに歯を失った所に、インプラントの被せ物が入っています。

治療前↓

患者さんは「何でもよく噛めてインプラントにして良かったです。」と言ってくださいました。

3か月に1度のメンテナンスも欠かさず通ってくださっています。

このケースに関しては、インプラントにして良かったなと本当に思います。

何より患者さんが説明に十分に納得されて、インプラントを選んでいただいたことが良かったです。

以上「インプラントにして良かった患者さんの話」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

歯が弱い人の歯医者選び。日本の歯医者がおこなう一番多い治療とは?

生まれつき歯が丈夫で、虫歯になったこともほとんどなく、歯周病を指摘されたこともなく、歯医者さんで歯磨きを褒められたことがある方。

そういう方の歯医者さん選びは、そう難しくありません。

定期的に検診を受けて、歯のクリーニングを受けていれば、ほぼ安泰ですので、どこの歯医者さんに行っても将来の結果はさほど変わらないと思います。

しかし、歯が弱くて今まで苦労をしている方の歯医者さん選びはとても大切です。

歯が弱い方が歯が悪くならないために、定期健診とクリーニングを受けることは重要ですが、その前にまず、お口の中に今ある歯がちゃんと治されているかはもっと重要なことです。

日本全国の歯医者さんで毎日おこなわれている治療で、一番多い治療は何かご存知でしょうか?

過去の治療のやり直しです。

やり直しというのは、一度治療した歯が悪くなって、またやり直しするということです。

永遠にもつ治療はどこにも存在しませんので、一度治療した歯は、いつかまた治療する時が来ます。

「詰め物が割れた、外れた、変色した。」

「被せ物の隙間から虫歯になった。」

「銀歯に穴が空いた。」

「歯の根の病気が再発した。」

やり直しにも色々な状態があります。

詰め物や被せ物は経年劣化することでやり直しになることはよくあります。

しかし、経年劣化が原因ではなく、治療の精度が低いことでやり直しになることがあるのも事実です。

患者さんが自分では気づけないレベルで、詰め物の隙間や段差などから虫歯菌が侵入して、歯が悪くなることはあります。

また、被せ物のセメントの付け方が良くなかったり、被せ物の嚙み合わせが良くなくてやり直しになる場合もあります。

やり直しの治療で注意しなければならないのは、

やり直しても、元通りになることは、ほとんどないということです。

歯を再治療する場合は、ほぼ歯を削りますので、歯の体積が減り、歯の寿命は短くなります。

同じ歯を4回治療すると抜歯になると言われているくらいです。

①小さな虫歯で銀歯を詰める。

②銀歯の隙間から虫歯になって、神経を抜く。

③神経を抜いた歯に膿が溜まって、根の治療をやり直す。

 

④根が薄くなった歯が割れて抜歯になる。歯根破折といいます。

画像で見る歯根破折

 

*上記画像は、それぞれ別の歯のケースです。

このようなパターンは結構あります。

つまりやり直すたびに歯は小さく弱くなり、歯の寿命が短くなるということです。

歯が弱いと思っている人は、

次のやり直しまでの期間が長くなる治療を選ぶこと

が重要になってくるのです。

段差のある詰め物や、根の治療がちゃんと出来ていない歯を抱えたまま、定期的に検診を受けて、クリーニングを受けても、虫歯や歯周病のリスクを下げることは難しいです。

これは日本の歯科に予防歯科が浸透した今でも変わらない普遍的な考え方ですが、歯を長持ちさせるには、

ちゃんと治してから、予防に移行することです。

当院には「今までの歯医者さんで、ずっと定期検診を受けているのに段々と歯が悪くなるので不安。」という患者さんが新規で来院されることが多いです。

そういう患者さんのお口を拝見した時に、共通するのが、

「ちゃんと治されていない、治っていない。」

です。

銀歯に隙間があったり、詰め物に段差があると、磨いているつもりでも、隙間や段差に歯垢が残ってしまっている歯はたくさんあります。

言い方が悪いのですが、ちゃんと治っていない歯は、穴が空いたバケツに水を入れているような状態です。

どんなに水を入れても、穴から水が漏れてしまう。

そういう状態で、正常な状態を維持することは出来ません。

予防歯科を受けていても、段々歯が悪くなる人は、歯が弱いからとあきらめないで、今の歯の状態が本当に治っているのか、日頃の歯磨きや予防歯科だけで悪化を防げるのか、セカンドオピニオンを受けることも必要かもしれません。

古い詰め物や被せ物、やり直しは必要?

不適合な銀歯の中身はどうなっていたか?

やり直しの少ない治療については、こちらも参考にどうぞ↓

長持ちするジルコニアクラウン

セラミック・ジルコニアの凄い点を実感しました。

以上「歯が弱い人の歯医者選び。日本の歯医者がおこなう一番多い治療とは?」でした。

皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。

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